朝起きて、自分を見て呆然とした。
「ちょ、<俺>!!」
「五月蝿いぞ、<オレ>...朝っぱらから何だ......っ!?」

茶色いふさふさとした耳と、
長いしっぽが、生えていた。

「もう何が起きてもおかしくないとは思っていたが...」
「これじゃあもうオレ、会社行けないよ...」
「会社に行くのは俺だろう?」

あの日から一週間、奇妙な二人暮らしをしている克哉と克哉で、
ベッドは一つしかないので、ノーマル克哉のほうがソファーで寝ているという状況下で、
更なる惨事が訪れた。

「最悪だ...」
いい年して何故こんなものがついているのか。
猫耳と猫尻尾。
しかも本物。
「<俺>、オレはどうすればいいんだ...」
「とにかく大人しく家から出るな」
「...分かった...」


**

適当にテレビなどを見てすごした。
それから少し昼寝をして、時刻は三時を回った。
そこで、気付いた。
「あ、...ご飯、ない...」
しまったと青ざめる。
家から出るなと言われたし、考えた挙句、
太一に電話を試みた。

「あ、...ごめん、太一? 大学、だったかな...?」
『あー、克哉さん!! どうしたんっすか? 俺なら今ロイドっすけど』
「ホント!? あの...さ、悪いんだけど、すごーく悪いんだけど...。
 家にさ、タマゴサンド届けて、くれないかな...」
『お安い御用で!! どうしたんすか? 具合でも悪いんっすか?』
「う、うん...まあそんなとこ...。ありがとう、太一」

五分ほどで、玄関のベルが鳴った。
克哉は慌てて帽子を被り、そして尻尾をズボンの中に無理矢理しまった。
「ありがと。ごめんね、太一」
「いや、全然構わないんっすけど、...どうしたんっすか? 帽子なんて被って」
「あ、は...は、なんでもない、よ...全然。じゃ、じゃあこれお金...」
「あ、どーも毎度有り。髪切ったんだけど失敗しちゃったーとか?」
「うん、まあそんなとこかな」

一番電話しやすかったのが彼だからつい頼んでしまったが、
少し失敗したなと思う。
「えー、でも克哉さんなら絶対どーんな髪型でも似合うと思いますよ!」
見せてくださいよ、と帽子を取ろうとする太一の手をなんとか交わすが、
すぐに取られてしまった。


「...へ...」
「......」
恥ずかしくて死にそうだった。

「朝起きたら耳?」
「そう、なんだ...」
「似合ってますよー」
「...嬉しくないよ...」

彼の気持ちを表すように、だらんと垂れた尻尾。
太一は克哉の部屋で克哉から状況説明を受けている。

「にしてもコレ、本物なわけ!?」
尻尾を捕まれて、吃驚して声が上がる。
「ぁっ...」
「! ..克哉さん、これいいんっすか?」
「やめてっ...太一!!」
その時、太一の携帯電話が鳴った。
「しまっ...マスターからだし...うわ...怒られる〜...」
はぁと深い溜息をついて立ち上がった彼に、少し安堵する克哉。
「またね、克哉さん。またいつでも呼んでくださいねー」
ひらひらと手を振って走り去る彼を見送ると、
玄関に座り込んだ。

「...なんでオレ...」
まもなく眼鏡をかけた自分が帰宅した。
早めに帰ってきてくれたのだろうか。
「ここも不便だな」
御堂のマンションなら食べ物を注文したりできるのにとうわ言をいいながら、
買ってきた食べ物を克哉に渡す。

「冷蔵庫の中空だったのを思い出した。
 お前、昼はどうした?」
「...出前、取ったの」
「どこに。見つからなかっただろうな」
「だいじょうぶだよ!」
さっと克哉が克哉の携帯電話をひったくり、
発信履歴を見る。
「あのイヌか」
「犬って...」
「で、見つかったんだな。
 お前が無駄に明るい声出すのは大抵嘘だからな」
「...ぅ」
「で? 変なことされなかっただろうな」
「何でオレが変なことされなきゃいけないんだよ」

しーん。

「それは、お前が」
「は?」

壁にドスっと押さえつけられた。
そして無理矢理キスをさせられる。
「はぅっ...!! んっ、ぅ」
そのまま自身をなぞられ、ビクンと体が反応する。
「やめっ...!!」
「大きな声を出すな...隣の部屋に聞えるぞ」
「んん、ぅ...」
ズボンと下着を同時に降ろされ、完全に勃ったソレが露になる。
「随分と勃つのが早いようだが...?」
「なん、で...こんな...ぁッ、はぁッ!!」
無言のまま克哉は克哉をベッドに連行するとそのまま乱暴に押し倒す。
そして尻尾を後孔に埋め込む。
「ひぁッ!! んっ」
毛の生えたそれが、今までに無い感覚を引き起こす。
快感の波が押し寄せるたびに耳がぴくぴくと動く。
尻尾に与えられる快感と、下半身に響く快楽とで、思考回路は完全に真っ白だ。
「もう、だめだぁっ」
「駄目だ。」
その尻尾を抜いてやる。
「ぁ...」
そして、自らを挿入してやる。
「ぁう、ぁああッ!!」
激しく腰を揺らし、何度も何度も奥を突く。
克哉の目には涙が溢れる。
「ひっ、もう...っ、イかせてぇっ!!」
「っあ、あ。イけ。」
白い液を放ち、克哉は達した。
ビクンビクンと痙攣する後孔に耐え切れなくなった克哉も中に液を解放した。


そこから何度行為が繰り返されただろうか。
気付いたら朝で、
自分はベッドで、そして何故か眼鏡をかけた自分がソファーで寝ていた。
服もちゃんと着ているし、
猫耳も生えていない。

「...夢...だったのかな」
夢だと信じることにした。
しかしながら、カレンダーは土曜日を示しており、
もし猫耳が生えていた時の記憶が夢なら、
昨日がすっぽり無かったことになる。

「...夢だ夢。疲れてるんだ、きっと」
最終的に<俺>とヤったこと。それも全部含めて悪夢だと処理をして、
昨日はきっと一日中寝てしまったんだと無理やりな事を考える。
「...ん..」
ソファーで目覚めた克哉は、ベッドの克哉を見るなり不機嫌だった。
「つまらない」
「ん? 何か言った? <俺>?」
「いいや、なんでもない」

部屋の隅には、美味しそうに熟した柘榴が転がっていた。






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