「<俺>!! ここにあった服どうしたんだよ」
「は? 捨てた」

「ちょ、な、何勝手なことやってんだよ!!」
「あんなダサい服着てどこ行くんだよ」
センス悪い、と付け足す。
「センス悪いって...そ、んな...」
「その代わりだ。この優しい俺がお前のために服を買ってきてやった」
「いやな予感する」
「何か言ったか? <オレ>?」
「何も」

これだけ二人暮らしを続けていれば段々眼鏡をかけた自分のすることやることわかってきた。
「着ろ」
「明らかに変だよ?」
「折角買ってきてやったんだ。大体今それを着なければお前は素っ裸で生活しなければならないぞ?」
「...」
なんて暴君と心の中で呟きながら溜息を上げる。

仕方なく着る。

「...」
撃沈。

「どうだ、<オレ>。でて来い。大体そんなわざわざ風呂場で着替えなくてもいいだろう」
「...オレ、ここで生活する」
「風呂場でか」
「うん」

「いいからでて来い」
「嫌だ―――ッ!!」
無理矢理扉を開けようとする克哉に、必死に抵抗する克哉。
「大体こっちの服(?)の方がよっぽどセンス悪いって!! 何コレ!!」
「可愛いじゃないか? 前の服よりよっぽどいい。明日は休日。それで一緒に出かけるぞ?」
「冗談も大概にしろよ!! <俺>!!」
「冗談のつもりは全く無い」
「この際言うけど何で<俺>はそんなに自己中なんだよ!!」
「他人中心すぎて損をしまくっているどこぞの莫迦よりはよっぽどマシだと思うが?」
「大体、何でこんな短いスカート!!」
「ああ、お前は長いスカートの方が好みだったか?」
「違う!! 何でスカートなんだよってことだよ!」

引き戸を閉めようとする克哉と、こじ開けようとする克哉。
二人の力によって、
ついに

ドアが外れた。


「うわっ」
「っ!!」

しりもちをついた克哉は、無意識に咄嗟にスカートを押さえた。
「似合ってるじゃないか」
「はぁ? ちょっと、<俺>の服貸せよ!!」
「嫌だ。センスの悪さがうつる」
「何だよそれ...」
克哉は今現在、なんちゃって制服とでも言うようなブレザーを着ている。

「死にたい...」
「そこらへんの女子校生よりはよっぽどだぞ?」
「明日でかけるとか絶対駄目だからな!!」
「いいじゃないか。別に誰も気付くわけないだろ」
「もし誰かに会ったら...。ってか一緒に出かけるんだろ? なおさら駄目だろ」
「何か言われたら妹ですって言えば済むだろう」
「済まないよ。どこの世界に180cm超える妹がいるんだよ」
「いるだろ、どこかに」
「そうだ、じゃんけん、じゃんけんで決めよう。明日行くか行かないか」
「無駄な足掻きだな」
「いいよ、もう。せーの、じゃんけんぽんッ」

パー。
チョキ。

眼鏡克哉の勝ち。

「お前はいつもパーを出すんだ」
「...(死亡)」
「さて、明日が楽しみだな」
くくく、と笑う克哉に、克哉はとことん鬼だと思うのだった。






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