「片桐さん、片桐さん!!」
本多の叫び声が直に耳に入ってくる。
「御堂さん、御堂さん!!」
克哉の声も聞える。
御堂は酷い頭痛に襲われながら、ものすごい騒ぎ声に起き上がった。
しかし、目の前に見知った人物を見かけた。
自分が倒れている。
呆然としていると、克哉が御堂に声をかける。
「片桐さん、大丈夫ですか? 頭」
頭大丈夫ですか?
悪気は無いのかもしれないが、場合によっては最低な言い方である。
しかも誰が片桐だと眉間に皺を寄せた。
彼が起きた事を確認すると今度は克哉は御堂を起こそうとしている。
「な、何が起こっているんだ」
「片桐課長、大丈夫ですか。御堂部長と正面衝突っすからねー」
横から登場した本多に声をかけられ唖然とする。
「私が、片桐課長...だと?」
「何言ってるんですか?」
「かつ...佐伯くん」
「は、はい?」
吃驚して克哉が振り返る。
「あいたたた...」
「御堂さん!」
「佐伯君? あいたた...」
「大丈夫ですか?」
「あぁ、はい。心配をかけてすみません」
にっこり。
思わず克哉は顔を赤らめる。
しかし、すぐに御堂は青ざめた。
「って.....ちょ、え、...これはどういうこと...ですか?」
素っ頓狂な声をあげる御堂。
「へ?」
「何故僕が」
「そ、それは私の台詞だ」
***
「入れ替わっちゃったってことですか?」
「そう考えるのが妥当だろう」
横にいるのが片桐ではなく実は中身が御堂だという事実に、克哉は終始落ち着かない。
「どうすれば戻るんでしょう...。急がないと仕事が...」
心配そうに片桐の姿で中身は御堂の横に座る克哉。
「今日は仕方ない...とか」
「何言ってるんだよ、本多!! 一刻も早くしないと!!」
ものすごい剣幕の克哉に圧倒される本多。
「御堂さん...」
「でもよ、そんなにすぐに解決策なんて」
「そうだけど...」
本多に宥められて、少し落ち着きを見せる克哉に、
片桐の姿の御堂がじっとしていられず、克哉の手を引く。
「私はこれから次のミーティングがあるんだ」
「あの、でも御堂さん...、その姿じゃ...」
「...ッ」
「やっぱり今日すぐに解決ってのは無理じゃないっすか? 今日はお互いに職場を交換するしか」
「駄目だ!! 今日のミーティングは至極大事なもので!!」
「御堂さん、落ち着いてください。オレが何とかしますから...。オレを信じてください」
「...佐伯...くん...」
真剣な克哉を信じて、御堂はキクチに、片桐はMGNで今日一日過ごすことになったのだった。
**
「ねえ、ちょっと。今日の課長なんか怖くない?」
「お茶いつも出してくれるのに...淹れたほうがいいのかな」
女性社員たちがひそひそと奥で話している。
御堂は黙々と仕事をしている。
どんな仕事でもすぐに対応できる彼に少しムカつく本多であったが、
ムカつく自分が負け犬のようで、彼を視界から追い出すべく企業営業の方に出かけることにした。
「...(克哉...どうしているだろうか...)」
片桐は完全に安全区域だとは思うが、
それでも自分のポジションをそのまま奪われたのかと思うと腹が立つ。
それがまた片桐の姿の御堂の周りを険悪なムードに変えているのだった。
***
「みどっ...、片桐さん...」
「いやぁ、驚きました。佐伯君。かっこよかったですよ」
御堂の姿と御堂の声でそういわれると自然と照れてしまう。
「こちらの会社にも慣れたようで、安心しましたよ」
「い、いえ、そんな...」
「えっと、それから僕は何をすればいいんでしょうか」
「片桐さんは休んでいても大丈夫ですよ。お疲れでしょう? オレがやっておきますから」
「え、でも...」
「オレのほうが此方の仕事には慣れてますし...」
「でも佐伯君に迷惑かけるわけには...」
「あ、じゃぁ...」
*
資料室への地図を貰った片桐は、資料を運んでいた。
「御堂部長」
声をかけられても瞬時に反応できず、目の前に唐突に現れた人物に驚く。
「あ、えっと...」
誰なんでしょう、この人は...と至ってスローな思考回路を
彼なりにフル回転させてはみたものの、知らない人物は知らない。
「御堂部長、お運びしますよ」
「え、あ、ああ...。ありがとうございます」
「...(ございます?? ...な、何か今日の御堂部長どうしたんだ...?)」
角が取れたというか、
何となくオーラが違う。
「ありがとうございました。助かりました、本当に...」
デスクに置いてもらって、片桐はぺこりとお礼をする。
「(み、御堂部長が...!? ちょ、嘘ッ!?)」
お辞儀をした片桐に、社員は焦る。
「あ、あの、部長、何か悪いものでも食べたんですか..?」
「悪いもの?」
「あ、いえ、その...それともな、何かいいことでも?」
「いいこと?」
丁度その時、克哉が部屋に戻って来た。
「あ、み、御堂部長」
「あ、さ、佐伯さんっ、今日の御堂部長おかしいと思いませんか!?」
突然耳打ちしてくる社員に、克哉も少々動揺する。
「いっいや、う、うん。そう思わなくも無いけど..」
ちらりと片桐に目をやれば、
御堂の顔でにっこり笑っている。
「(...ああ...)」
呆れながらもそんな御堂の姿に照れてしまう。
今頃本物の御堂さんはどうしているのだろうと思いながら、
とにかく早く今日一日が終わってくれと思う克哉だった。
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後書きという名の懺悔室
書いてて段々分からなくなってきた(アホ。
片桐? 御堂?
というか、本当は本多と入れ替えたかったんですがー、
にっこり笑ってる乙女な御堂もいいんじゃないかと
すみません。出来心でした
今からちょっと鬼畜克哉に殺されて参りますー。
*きちくかつやのへや*
「ほお? いつも在り来たりな駄作ばかり書きやがって」
す、すすすすすみません、いやマジで。
「これでお前、旺文社の小説部門で銀賞だと? まぐれ決定だな」
そ、そうなんですが...、ど、どうも本格的に書くと重くなるのが癖でして。
「しかも前編と後編に分けるとは...」
あ、焦らしプレイを取り入れてみましたww
「正真正銘のアホだな...。ちょっとそこで溺れてろ」
へ!? ちょ、浴槽っ!? いつの間に!? まっ、ごぼごぼごぼ...
死亡。
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