「合コン!?」
克哉は電話に向かって大声を上げた。

『おう、来るだろ? 急に純輔が来れなくなってよ...』
「い、いや...遠慮しとくよ...」
大好きな人がいるから。
御堂がいるから。

『はぁ? お前MGNに行ってから付き合い悪くなったんじゃねえ?』
「そ、そんなことないよ!! この前だって飲み会一緒に行ったじゃないか」
『そう、か...、あ。あぁぁぁぁ』
唐突にニヤリとした声をあげるから、ドキッとした。
『お前、女できたのか?』
「ち、違うよ!!」
恋人は出来たが女ではない。
そんな屁理屈じみたことは伏せて、完全否定をする。

「今どこよー」
「え、今?」

唐突に、声が二重になってはたりと顔を上げた。


ばったり。

しかも女性組みも既に一緒で、
克哉は敢え無く拉致された...。


「すみません、御堂さん...、ちょっと遅くなるかも...」
トイレ前のスペースで御堂に電話をかける。
「何かあったのか?」
「いや...その...本多に...っていうか...、半ば女子達に捕まりまし、て」
「また本多か。...女子?」
「あ、そ、その...合コン、に...オレは断ったんですけど...」
あわあわと言う克哉。
その時。

『あ〜、克哉くんここにいたんだぁ、早く向こうで飲もうよ!!』
『えっ、あ、ちょっ』
ブチッ。

電話が切れると同時に、御堂の何かも切れた。



一方此方はかなり盛り上がって(?)いた。
克哉がかなり女子から人気を浴びて、男子としては気に食わないところではあったが、
場が盛り上がってくれているので結構助かっているようだ。

皆酒も入ってきて、最高潮のテンションになったところで定番の王様ゲームがスタート。
「(...御堂さん...)」
「あ、私が王様ー♪ えっとね、二番が尻文字ぃ!!」
籤運が強いのか弱いのかよくわからないところであるが、
克哉は何とか番号をすり抜けて、5周目まで安全地帯にいた。

「...(良かった...)」
「えっと、次は俺か」
本多が王様を引き当て、番号を指名する。

「5番が8番の頬にキス!!」
どんどんゲームを進めるごとに命令が過激化。
「8番私ー!!」
「...あ...」
「おー、克哉が5番??」

仕方なく頬に軽くキスをする。




御堂は見てしまった。
克哉が女にキスをするところを。

御堂は固まった。
「仕事のことで至急の用事があるから佐伯を探している」
と部署の者達にメールを一気に送信した。
その結果、居酒屋に入っていく佐伯を見たという者が居て、
そこを大至急訪れたのだった。

「...」
そんな中、一人の女子が克哉に問う。

「克哉くんはどんな女の子がタイプ?」
「えっ...えーっと」
焦る克哉。只今頭の中九割型御堂。

「えっと、仕事も私生活も完璧主義で、
 他人に厳しく自分にも厳しくなんだけど、
 ちゃんと成果が出たときは褒めてくれて...」

そのまんま御堂。

御堂はそれを聞いて思わず赤くなる。
「佐伯君」
「御堂部長!!」
「あれ? 御堂部長」
「急な仕事が入った」
「わ、分かりました!!」
克哉が立ち上がると、酔った本多が御堂に文句を言う。
「いつも克哉をコキ使うんだよ...この鬼、悪魔!! 今日は休日なんだぞ?」

「いいんだよ、本多。オレは仕事好きだから。今日は楽しかった、ありがとう。じゃあね」

本多たちを残して、克哉は御堂と共に店を出る。

「す、すみません...」
「...」
「怒ってますよね...オレがもっとちゃんと断ってれば良かったのに」
「何をしていたんだ?」
「...王様ゲーム...を...(ま、まさか見られてた...!?)」
重たい空気が流れる。

「あの...孝典さん...どこから...見てました...?」
「...キスしたところからだ」
ますます重たい空気が流れる。

「私は他人に厳しく自分にも厳しく、見えるか?」
「...ぁ...」

克哉は自分の言ったコトを思い出し、顔を赤らめる。
「...オレが好きなのは孝典さん、だけですから」
「しかし...君は少し、お仕置きが必要なようだな?」
「...な」
更に顔を赤らめる克哉を、御堂は満足そうに眺めていた。

今夜はきっと眠れないだろう。






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