「片桐さん」
ミーティング後に克哉は片桐に声をかけた。
「はい?」
「あの、仕事とは別件なんですが...」
克哉よりも年上なので、きっと経験も豊富だろうと、
誕生日プレゼントに関するいいアイディアを貰おうと思ったのだ。

「誕生日プレゼント、ですか? 上司の」
「はい...」
しばらく考えた後に、片桐は笑って言う。

「お菓子ですかね。一番手軽で...僕はいつもお菓子を差し上げています」
「ぁ...」
にっこりと言う彼に申し訳ないくらい、
その案は役に立たない気がする。

「物、を上げるとしたら?」
「ええと、物、ですか。僕はいつもお菓子なので...ネクタイとかではいけませんか? あと手帳とか」
あまりにベタ過ぎるラインに克哉は心の中で溜息をついた。
別に片桐が悪いわけではないのだが、
少しばかり期待しすぎたようだ。

だがなんとなくそんな答えが片桐らしくていいとも思える。




「あ? 上司のプレゼント?」
本多に問うて、怪訝そうな声をあげられた。
「物で...? お前まさかっ、御堂にあげるんじゃねえだろうな!?」
「あ、ははは」
「マジでか!? あんな奴にはトカゲの死骸とかやればいいんだよ!!」
どれだけ御堂を嫌悪しているのか。
しかも言うことが小学生的である。
「本多...仮にも上司だからっ...」
仮にも上司だから。
仮にも恋人だから。
「...実用的なものをあげるかな。ほら、ゴルフとか行くんならそういうものとかさ」
それも少し違う気がする。
お礼は言ったものの、あまり良い収穫にはならなかった。




「...上司のって言うからいけないのかな」
恋人の、と言ってしまえばどうだろうか。
しかしながら、女性相手にあげるプレゼントではないので、
自分の恋人ということにするとおかしな事になる。

「友達の、恋人?」
言ってみて違和感があるが、そうするしかあるまい。

設定としては、
友達に恋人が出来た、だけど男の人と付き合うのは初めてで何を誕生日にあげればいいのかわからない。

それを掲げて早速女性社員をターゲットに聞いてみることにした。
守ってあげたいキャラとして女性社員からそれなりに好かれている克哉は、
すんなりと情報を聞き出せた。

「旅行...いいかもな...」
思い出作れるし、かなり有力な案を手に入れて、
克哉はかなり満足だった。
「帰りにパンフレットでも貰っていこう」
御堂はどういうところに行きたいんだろう、と考え始めると止まらない。

京都で上賀茂神社の紅葉をバックに立つ御堂は素敵だとか、
長崎で大浦天主堂で祈る御堂は神秘的だとか
広島の厳島神社の前で写真を撮ったらとか

普段は洋風のもののイメージな彼が、わりと和風なものにも似合うのだと思いながら、
結局は「ああ、御堂さんはかっこいいから何でも似合うんだ」なんて
惚気たっぷりに考えてみる。


「克哉」
唐突にオフィスで名前を呼ばれてハッとする。
「はい?」
御堂の執務室で二人きりの状況とはいえ、
会社であるからそう呼ぶことは避けているのに、
御堂が突然克哉を呼ぶ。

「何をしている」
怒った表情の彼に、克哉は驚く。
「何って?」
「女性社員に何か聞きまわっているようだが...」
「...ぁ...」
しまったという声を漏らした彼に、ますます御堂の眉間の皺は深くなるばかりだ。
「何か私に言えない事でも?」
「...言えない、です」
驚かせるのだ。
まだ言えない。
「何故だ?」
「そ、それは...」
言葉に詰まり、顔を背けた克哉を御堂は部屋の端まで追い詰めた。

「恋人の私に隠し事とはいい度胸だ」
「そんなつもりはっ...」
「では、どんなつもりだ?」





御堂に完敗した。
誕生日前にくだらないことで喧嘩なんてしたくなかった克哉は
数分で折れ、プレゼントの計画を御堂に漏らした。
「そういえば誕生日だったな」
「忘れてたんですか?」
「ああ」
あまりにもすっきり言われて克哉は呆然だ。

「誕生日プレゼントよりも...」
ぎゅっと抱きしめられて克哉は身動きが取れなくなった。
「ちょ、御堂さん!! ここ会社っ」
「君と二人きりでいられればそれでいい」
「なっ...」
一気に顔に血が上る。

「しかし...折角用意してくれているのなら楽しみにしているぞ」
打ち合わせの時間だと、仕事に戻る御堂の背中をぽかんと見つめているのも束の間、
「何をしている」と言われてハッと現実に戻る克哉であった。






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まだ続く予定。
多分次は分岐になってしまうかも。
フツーに誕生日を祝うか、
御堂を少し苛めちゃうかww(爆。
可愛い人は苛めたくなってしまうんです☆(ヤメ







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