朝起きて、愕然とした。
繋がったまんま。
「ちょっ、」
克哉はとにかく抜くことを考え、
それを実行に移そうとする。
<自分>に気付かれないように、そっと。
「...ぅ...」
ゆっくりと抜かれていくのも奇妙な感じで、
克哉は小さく声を漏らした。
あと少しで抜けると言うところで、<自分>が寝返りをうった。
「ぁあんッ!!」
その瞬間、ピクリと克哉が反応した。
「朝っぱらからそんな声だして...誘っているのか?」
「挿れたまま、寝る、お前が、悪いんだ、ろっ」
早く抜けと促す克哉に、克哉は笑ってそれを否定した。
「はぁッ!? 早く仕事行けっ!!」
「朝食にお前を頂いていく事にする」
「莫迦ッ、ちゃんと栄養価のあるもの食えって」
「列記としたエネルゲンだ」
え ね る げ ん 。
克哉の脳内が真っ白になったのをいいことに、尻に手を回す。
「うわっ、やめ!! エネルゲンじゃないからっ、食事作る!!」
あわてて飛び起きて床に散らばった衣服をとろうとして、それがスーツであったことから、
昨日の自分の行動を思い出す。
「しまった!! 昨日会社無断で抜け出してきちゃったんだ!!」
「本当にお前は...。まあいい、上手く言っておく」
克哉は克哉を見送り、
そして部屋に一人ぼっちになった時点で更に思い出す。
「ヤバイ、オレ泣きながら会社飛び出たんだっけ」
本多に何か言われないだろうかと心配する克哉だが、
昨晩の行為からの疲れかいつの間にかソファーでテレビを見ながら眠ってしまっていた。
「克哉!!」
「本多か。どうした」
「どうしたじゃねえっての!! 昨日は」
「昨日なら体調が悪くて早退した。会社を出たところで意識を飛ばして救急車だ」
克哉的にも際どい嘘だと思う。
朝の通勤中は<克哉>の「すき」の言葉が離れずに、
言い訳なんぞ考える暇がなかった。
我ながら本当に溺愛してしまっていると思う。
そんなこと嫌でもアイツには言えないが。
「ストレスか何かか?」
「ただの風邪だ」
「嘘つけ!! 昨日お前泣いてたじゃねえか」
「(泣いてた?)」
「ボロボロだったぞ、もう。その後もかなり話題になったんだぞ?」
悲劇のヒロインっぽかったというのは本多の胸の内に秘めておく事にしよう。
「腹が痛すぎて、だ」
際どい嘘が更に際どさを増した。
小学生でもこんな嘘はつくかつかないか...。
克哉のそんな様子を見たかったと思い、
今晩は「本多にそんな泣き顔を見せたお仕置き」とでも偽って過激に攻める予定を立てておく。
「大丈夫か? あ、片桐さんも凄い心配してたぜ。
心配性だからな。ちなみに片桐さんが代わりに欠勤届けを出してくれたんだぜ」
「そうか」
気が利くじゃないか、とあくまで上から目線の克哉。
<克哉>はいつも「片桐さんはいい人だから」と言っているが、
あれはいい人ではなく、ただのお人よしだと思う克哉は、
何となく奴に鬼畜眼鏡を付けて攻めキャラにでもしてやりたい気分であった。
まあそれを傍観したいと思う克哉は更に鬼畜なのかもしれないが。
【克哉の回想】
「片桐さん、今回はご迷惑をおかけしてすみませんでした。
これ、つまらないものですが」
「なんだい? これは」
「眼鏡ですよ。かけてみてください」
「ああ、ちょうど最近老眼の眼鏡を...」
装着
<鬼畜ルート発動>
⇒御堂を接待する
⇒本多を接待する
⇒大隈を接待する
⇒あえて権藤を接待する
【回想強制終了】
「ちなみにこの間約2秒」
「何が二秒なんだ?」
「いいや、こちらの話だ」
くくく、と自分の回想に笑う克哉の思考が分からずクエスチョンマークを飛ばす本多。
「にしてもお前本当に今日は幸せそうだな」
「そう見えるのか?」
「ああ。物凄く。 ホント最近お前、気分が山の天気な」
昨日は大雨だったのに、今日は快晴かよ、と呟く本多に、
「人生は塞翁が馬なんだよ」
と笑いながらいつも本多に叩かれているように、本多の背中を叩いた。
「今日は昨日の分まで頑張らないといけないからな」
「俺も負けねえからな」
「それはどうかな」
家で待っている克哉のために、
今日も頑張ろう。
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