克哉は今日も完全主婦的生活を送っていた。
唯一主婦と違うのは、主婦以上に周囲との関わりが無い事だ。
買い物は眼鏡を掛けた自分が行ってくれる。
しかも外に出るなと言われている。
ほぼニート的生活に克哉は毎日を持て余していた。

「...このままじゃ駄目な気がする...」
流石にこのままでは冗談抜きでカビが生える。

何かバイト、
しかも克哉に見つからない程度のものはないだろうか。


とは言っても、
いつだかはこの部屋に盗撮カメラが仕掛けてあると言っていた。
ほぼ無理なんですけどー!!



「というわけでね、オレ、少しだけバイトとかしたいんだ」
「...」
「だってほら、<俺>にだけ働かせてるのは悪いだろ?」
「...」
「効率的だし、そうすれば脱アパートも近くなると思うんだ」


脱アパート。

【眼鏡克哉の脳内】

<オレ>の喘ぎ声はでかい。

いつも堪えようとして噛み付く癖がある。

たまにはまともに声を聞きたい。

むしろいつもまともに声を聞きたい。

しかしアパートの場合横に聞える恐れ有り。

マンション・一軒家なら問題なし。



いいかもしれないと言い掛けて
口を閉じた。



【眼鏡克哉の脳内】

例えば喫茶店でバイト。(ロイドは却下)←駄犬がいるから。

店長に気に入られる

給料を上げるからと唐突に密室に呼び出され
ピー(放送禁止用語)



いや、放送禁止用語など今更関係ないが(笑。


「駄目だ」
他の人間に克哉を見せたくない。

「何でだよ?!」
「駄目なものは駄目だ。お前はすぐに、し、失敗するだろう」
「ロイドは? ロイド!! ロイドも駄目なの?」
「最高に却下対象だ」
「オレたちのこと知ってる太一がいるし、マスターもいるし」
それが危険なのだ。太一が最も。 気 付 け。


脱アパートで克哉とあんあんし放題か、
眼鏡克哉の頑張りのみでの脱アパートを計画するか。

「お願いだよ、このままだとオレカビが生えるかも」
カビ。

そして、お願い、と見つめる克哉が眩しい。
「オレ失敗しないように頑張るから」
可愛くて可愛くて


がばっ。
「おまっ、ちょ!! やめろっ、バイトのハナシは!?」
「考えておく」
「考えておくって...カビが生えてからじゃ遅いんだぞ!!」
「カビのお陰で旨くなる食い物もあるからな」
チーズとか、日本酒などの発酵食品とか、とあげてやる。
「...」
何もいえなくなってパクパクと口を金魚のように開閉する克哉の口にキスをする。
「大丈夫だ、何があっても離したりはしない」
「嬉しいけどっ、それは。でもそういう問題じゃないっ!!
 <俺>はもっと広いところに住みたくないの?
 ベッド二つ欲しくないの!?」
「俺はベッドは一つでいいと思うが」

しーん。

「お前ぇぇッ」
「何だ。正論だろう?」
恥ずかしくて顔を真っ赤にしながら、まだ自分の上に誇っている克哉に向かって抵抗する。
「ベッドを二つ買う前にクローゼットを二つ用意してくれ」
眼鏡の克哉が思い出したように言う。
「そうだ。勝手に服を捨てられちゃ困るから」
「いや、お前のクローゼットのものは全て俺が選ぶ」
「は!?」
「俺のは弄らせない。俺のクローゼットには鍵をかけておく」
なんだ、その俺のものは俺のもの、お前のものも俺のものな意見!!
お前はジャイ○ンか!!
いや、ジャ○アンだ。そんなことずっと前から知っている。

一軒家とマンションとどっちがいいとか、
部屋数はいくつがいいだとか、
お風呂は大きい方が良いとか狭くていいとか、
未来予想図を描きながら、二人はいつの間にか眠ってしまっていた。







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