今日も留守番だった。
バイトのハナシは保留となって、
克哉は相変わらずの専業主婦生活だ。

朝、「散歩だけしちゃだめ?」と克哉に聞いたところ、
「運動なら夜十分やっているだろう」
と一蹴された。

へなへなとまたベッドに舞い戻ると、
まだぬくもりの残る布団に包まった。
「あ...シーツ洗わなきゃ」
最近は行為の激しさ故か、
毎日シーツを洗っている。

毎朝こうして真っ赤になりながらシーツを洗濯機に入れる。
洗濯機のスイッチを入れたところで、
インターフォンが鳴った。

「...誰だ?」
滅多に誰も尋ねないこの部屋に、誰が来たというのだろうか。
克哉はのぞき穴から外を確認する。

「誰もいない?」
克哉はチェーンをしたままドアを開けて外を確認する。

「どなたですかー?」
そのときだ。
唐突に足元を何かに掬われた。
「うわっ!?」
倒れこむ間もなく、手首を奪われ、克哉は宙に浮いた状態になる。
それはどこかで見覚えのある植物で。

「なっ...」
その植物が、玄関のチェーンを外す。
開くドアの前に立っていたのは、Mr.Rだった。

「お久しぶりです、佐伯克哉さん」
「ぅあっ...、離してくださいっ...」
徐々に服の中に侵入を開始する植物に、克哉は身を捩らせる。
「眼鏡をかけられた自分との生活は楽しいですか?」
服のボタンがはじけ飛ぶ。
「っうぐぅ...」
口の中に植物が入り込み、
そしてズボンは溶け始め、その穴からどんどん植物が入り込んでいく。
「私達も少し、愉しませて頂きたくて参りました。
 反抗はあまりなさらない方がいいですよ。
 眼鏡の佐伯克哉さんを提供しているのは私なんですから」
克哉の体がピクリと反応する。
逆らえば眼鏡の自分はまた消えてしまうのか。

「(盗撮カメラでっ...、きっと<俺>が...!!!)」
助けに来てくれるのではないかと、
克哉はどこにあるのか未だ分からないそれを頼る。
「おや、もしやこれのことですか?」
「...ぅ...?」
Mr.Rの手に握られた黒い物体は間違いなくカメラだ。
「ご心配なく。彼には他の映像を送っていますから」
望みを絶たれて、
目の前に広がるのは絶望のみとなった。
「(いやだっ...、いやだぁ!!)」
口を塞がれ、上手く空気を取り込めないで、ただ吐くだけの呼吸を続ける克哉。
胸の突起を玩ばれて、わき腹をなぞられ、太ももを沿って克哉の自身にしゅるりと絡む。

「ぁあぅぅッ」
こんな未確認生命体に触られて感じてしまう自分が憎い。
勃ったソレに絡みつかれて刺激され、力なく喘ぐ克哉。
いつの間にか目からは涙が溢れる。
「綺麗ですよ」
Mr.Rの言葉も脳には届かない。
頬を伝う涙を厭らしく舐めあげられて、体が僅かに反応する。

「触手プレイはお好きなんですか? ココをこんなにして。
 ああ、それとも私に見られているからですか?」
頭を押さえつけられていて、首を横に振ることも出来ない。
「ふんっ...ん...」
「私にも挿れさせてください」
「んーっ、んんッ!!」
「喜んでくださるなんて光栄です」
嫌がっているのは分かっているはずなのに、
嫌味たっぷりに笑顔を作る彼が憎い。
植物が克哉の後ろの穴から退き、代わりにMr.Rのものが宛がわれ、そして挿入された。
「ふあああぁぁッ!!」
思わず黒い彼のコートをぎゅっと握る。
「ぁああっ、ああぅ!!」
だんだんと意識が遠退いていく。
しかし竿に絡まった植物がイくことを許さない。
「イきたいでしょう? 懇願してごらんなさい」
口の拘束が外され、自由になっても、
最後の理性がその言葉を言う事を拒む。
「ほら」
それでも口から出てくるのは単調な喘ぎ声だけで、
それに腹を立てたMr.Rは更に深くに挿入する。
「ぁああああぁ!!」
振動によって揺れる前髪。
涙なのか汗なのか分からない液体が顎を伝って胸に落ちる。

イきたい。
はちきれんばかりのソコが、限界に近付く。
「っ...ぁぁ...」
涙が溢れて、それでも言いたくなくて、
<自分>を裏切りたくなくて

「無駄な抵抗はおよしなさい。
 『消えて』しまいますよ?」
「..ぇ...?」
「正確には『消して』しまいますよ」
何が消えるのかは、意識が朦朧としている彼にも分かった。
それだけは、嫌で。

克哉は涙ながらに、
「イきたいです」
と応えた。





全てが元通りだった。
眠りから覚めると、
服も、散々精液を撒き散らした床も、
全部元通りだった。
唯一異なるのは、激しい下半身の痛み。

時刻は既に4時をまわっていた。
「...夕食..作らなきゃ...」
重たい身体を起こして、キッチンへと立つ。
ふらふらと覚束ない足取りで、ゆっくりと野菜を洗い、
そして包丁で切っていく。
「いたっ...」
人差し指の先端から血が滲み出た。
「...」
ぼーっとそれを眺めながら、 克哉は真っ白の頭で考え始めた。

<俺>には秘密にしておこう。







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