皆様の暖かいご支援のもと(?)
一切の自重なしで赤裸々に(?)書きます(笑)。




「切ったのか」
帰ってきて早々、克哉は克哉の指に巻かれた絆創膏に気付いた。

「う、うん。ボーっとしてたみたい」
隠すように後ろに隠した手を、
克哉はじっと眺める。
「熱でもあるのか? らしくない」
「大丈夫」
おでこに触れて、克哉は髪が少し湿っている事に気付いた。
「風呂、もう入ったのか」
「今日はゆっくり入りたかったから早めに入っちゃった」

笑う。
心配かけないようにと。
笑う。


気色悪い植物に犯された身体を懸命に洗った。
洗っても洗っても滑りが消えない気がして、
何度も何度も擦って、泣きながら洗った。
白い手袋に触れられた肌を何度も何度も石鹸をつけて
唇を噛み締めて洗った。

ごめん、と叫びながら。


自分を殺すことは得意だった。
昔からずっとそうやって逃げてきた。

だから



「スーツ煙草臭ッ...!! ダメだって、煙草。やめなよ」
克哉からスーツを受け取ると、
その煙草臭さに眉を顰めた。
「部屋の中まで煙草臭くなるだろ」
ファブ○ーズをかけながら、ハンガーに吊るす。
「煙草が身体に悪いってのは嘘だ。
 そこらの大通りに居た方がよっぽど肺がんになる。
 大体人間がそんな身体に悪いものを何百年と吸い続けるわけが無い」
ふん、と鼻を鳴らして立ち直っている彼に、
「部屋が臭くなるのは嫌なの」
と再度叱っておく。

良かった、気付いていないようだ。

「帰り際に権藤に捕まった」
「人事部長の?」
「あいつ本当にどうにかならないのか。全く」
「気に入られたんならいいじゃないか」
「ゴルフゴルフってウザったい」
「...」
夕食を食べ、そして缶ビールを飲みながらテレビを見る。
「大体ゴルフやってる人間が何でゴルフボール並みに丸いんだ」
酒が若干まわってきたのか、
克哉の愚痴が悪化する。

そして本日の愚痴が終了したのか、沈黙が続いた。

克哉がそっと克哉の腰に手を回し引き寄せると、
そっと額にキスをする。
「...」

抵抗したら怪しまれる。
それに、今は<俺>に無茶苦茶にされたい気分だった。
ちゃんと身体は洗ったから、大丈夫。

更に身体が密着して、そしてベッドにゆっくりと倒れこんだ。
「っ、ん」
暖かい感触。
植物や手袋なんかとは違う、心地よい熱が身体を這う。
「..だいすき...」
罪悪感をその言葉で埋めた。
本当に自分が好きなのは彼以外の誰でもないから。
どんな過激なセックスでも構わない。
<俺>にされるなら。





「いってらっしゃい」
送り出してホッとした。
勿論、二人でいる時間は楽しい。
ずっと二人でいたいと思う。
それでも、<俺>といると、あの瞬間が絶えず脳裏に浮かばれる。

「おはようございます、佐伯克哉さん。
 エプロン姿も素敵ですねぇ」
仕事へ行った克哉を見送った体勢のまま玄関に立っていた克哉は
その声にびくりと身体を震わせて後ろを振り返った。

どこから入ったのかは分からない。
ベランダの鍵は閉まっているはずだし、
ここは二階である。
「...」
にっこりと、仮面のような笑顔を貼り付けて、近寄ってくる。
「きょ、今日は何の御用で、しょうか」
答えはほとんど知れていた。
それでもそれを認めたくなくて、最後の希望に頼る。
しかしそんなものは一蹴された。

「昨日はあまり私がお相手することができませんでしたので」
克哉はぐ、と後退する。
「私を愉しませて下さい」
退歩を続ける克哉だったが、
いずれは逃げ場を失うわけで、
壁際に追い込まれた。
「...っ」
冷や汗が頬を伝う。

くすくすという、空気だけの笑い声が克哉の頬を撫でた。
狂気な笑みが克哉の恐怖を増大させる。

片手で克哉の手首を彼の頭上で拘束すると、
もう片方の手で克哉の胸板をそっとなぞる。
「..!!」
それだけで、涙が溢れた。
「お美しい」
克哉の断腸の思いはただ黒ずくめの彼を悦ばせるだけだった。

服の上から胸の突起をなぞり、弄ぶ。
「ぅっ...」
唇を噛み締め、声が漏れるのを防ごうとする。
「快楽に素直におなりなさい。
 人間なんですから気持ちよくてごく当然なんですよ?」
克哉はふるふると力なく首を横に振った。
「素直じゃありませんねぇ。でも身体は至極、実直のようですが」
主張を始めた克哉自身を軽く撫でる。
「ひぅっ!!」
しばらくそうやって、触れるか触れないかの軽い愛撫を続けたあと、
ようやく手がズボンの中に侵入し始めた。
「ぁ、ぅ」
堪えようと努力しているのに、
どうしても隙間から僅かな啼き声が漏れる。
「んっ...、んんぅ!!」
いつの間にか脱がされたズボンは足首の辺りにだらしなくたまっている。
ペニスにあたる革の手袋の感触が克哉の脳内を狂わせていく。
「ぁぁあッ」
「もっと乱れて御覧なさい。<彼>にも見せたことのないような...」
「ぅぅっ」
足が震え始め、立っているのも困難な彼にとって、
Mr.Rの言葉は全く脳に届いていなかった。
何も考えられない。

壁に押し付けられると、そのまま両足を抱えられ、
何の合図なしにそそり立ったペニスを挿入された。
「んぁああああああッ!!」
頬を伝う涙が跳ねた。
壊れたカセットテープのようにただ喘ぎ声のみを漏らす克哉に、
Mr.Rは口角を緩ませる。
「素敵ですよ。まるでお人形のようです」
突き上げられて、意識さえ保っていられなくなってくる。
「イきたいですよねえ?」
愉しそうに言う彼に、克哉はこくこくと頷いた。
早くここから解放してほしくて。
「ダメですよ」
「...ふ..ぁ...?」
くくく、と喉の奥からの嗤い声に、克哉はぞくりと背筋を振るわせた。
革の手袋越しに強く握られた克哉自身は、それを解放してもらわない限り射精できない。

「ほら、もっと快感に狂って見せてください。
 ああ、それとも貴方は触手プレイの方がやはりお好きですか?
 もっと違った趣向のものをご用意すれば良かったでしょうか。
 痴漢、レイプ、獣姦、輪姦、あぁ、鞭などもご用意した方が良かったですか?」
躊躇い無く吐き出される単語に、
克哉は怯えた。

「貴方はマゾヒストですからねえ」
「ちが...ぅ..」
「こんなに酷く扱われて感じているじゃありませんか。
 そうですね、悦んでいただいているようですし、この際もっと酷くしてさしあげますよ?」
克哉をベッドに押し倒すと、
ポケットから布を取り出して、
克哉の目を覆う。
そして眼鏡の克哉が使ってくれるバイブやローター、ローションなどを取り出す。
コードをペニスに巻きつけて、更にアヌス内にもローターを突っ込む。
「ひぁあああッ!!」
失神寸前までに悦楽の波が襲ってくる。
克哉はシーツをぎゅっと握り締め、快感に喘ぐ。

視界を絶たれて、どこを触られるのか全く分からず克哉は絶えず緊張の糸を切らない。
しかしそうやって意識をしていると更に感じてしまう。
「んーっ、ぅッ...!!」
もうだめだ。
絡みついたコードの所為で射精できずに克哉は苦しみ喘ぐ。
「もっ...いやぁっ...!!」
助けて、と喉の奥で呟いた。



何度イったのかわからない。

焦らされてはイって、焦らされてはイってを繰り返していた。
いつの間にか克哉は意識を手放し、
それこそ本当に人形も同然のようになった。

しばらくするとMr.Rも消えて、部屋にはただ克哉が倒れているだけとなった。



携帯電話が鳴って、克哉は目が覚めた。
「...もし、もし」
「ああ、<オレ>」
「<俺>...、どうしたの? あ、遅くなるの、かな」
「そこまで遅くなる気はないが...、先に夕食食べて寝ていてくれ」
「うん...、無理はするなよ」
「分かっている」
残業の報告で、
ある意味少し克哉は安堵した。

<俺>の分だけ夕食を作ったら寝ていよう、と
重たい身体に鞭打ってキッチンへ立つのだった。







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