唐突に視界が反転した。
「くッ...!!」
「ふふっ」
手足を何かに拘束された克哉は苦しそうな声をあげた。

「何をっ...」
しゅるりと服の中に滑り込んできたソレは、
克哉の見た事の無い植物だった。
「貴方の喘ぐ姿も素敵でしょうねえ」
「ふっ、ふざけるなっ!!」
バッとMr.Rを殴ろうとしたが、そのきつい締め付けによって、それは防がれた。
「っく...」
「もう1人の貴方は素直でしたよ?
 私のお陰であなた方がこうしていられると認知していらっしゃるからでしょうね。
 貴方もそれは自覚すべきことではありませんか?」
「ふっ、ふん、」
反抗的な態度にMr.Rは眼鏡の奥で目を細めた。
「少しばかり、躾けが必要でしょうか」
「なっ...」
絡みつく植物が動き出して、克哉のペニスを締め上げる。
勃起していなかったソレも、敢え無く反応してしまう。
「もう1人の貴方はここが良さそうでしたよ?」
「ぁ...ッ、く」
迷わずにアヌスに入り込み、太い茎から延びた細い茎がアヌスの周りの壁を細かく刺激をする。
「っ...、は」
低く艶やかな吐息は、
<克哉>のものとは全くと言っていいほどに異なる。

口腔内に入ろうと植物は試みているようだが、
Mr.Rがそれを阻止した。
「彼にはもっと啼いていただかなくては」
距離をおいてただ見ているだけの彼を克哉はギッと睨みつけ、
そして唾を吐きかけた。
頬についた唾をMr.Rは嗤いながら拭う。
「彼にはキツイ躾けでないといけないようですね」
口元だけを歪めて、目元は全く笑っていない彼はふっと歩み寄った。

そのときだった。
勢いよくドアが開いた。
「<俺>ッ!!」
息を切らした克哉が入ってきた。
そしてMr.Rから守るように克哉の前に立った。
「何でっ...、何でこんなことするんですか!?」
目に涙を溜めて震える足で必死に訴える。
いつ植物に自分も拘束されるか分からない。
それでも、必死に。

「貴方はオレたちが二人で存在することが気に入らないんですか?」
「いいえ、とんでもありません」
「じゃあなんで」
「貴方方は本当に素晴らしい。私の最高傑作とも言えるでしょう。」
「最高傑作?」
「はい。分裂しても全くの正常であり、お互いを尊重し合い、打ち消しあう事が無い。
 今まではどれも打ち消しあい、滅びてしまった」
「ほろ...」
克哉は背筋を凍らせた。

「大丈夫です。もうあなた方は滅びる事は無い。
 完成されたのです。」

オモチャを扱うようなその台詞に、二人の克哉は互いに眉を顰めた。
「あなた方は模範解答とも言えるでしょう。
 本当に素晴らしい」
オーバーアクションに両手を広げて語る彼に、
克哉が、動いた。


Mr.Rの笑い声が響いた。
「ご自分の立場が分かっていらっしゃいますか?
 囚われてまともに動けない貴方が何をなさっているのです?
 もっとも、たとえ囚われていないこちらの貴方だとしても、
 貴方には私に何かする勇気などない...」
嘲るように笑うと、
眼鏡を掛けていない克哉の顎を捕らえた。
「そうでしょう? 佐伯克哉さん」



その瞬間、鈍い音が響いた。
食い込む音が生々しく部屋に伝わり、
闇へと吸い込まれていく。
「オレは...オレは...っ」
ガクガクと震えた手を懸命に動かして、
Mr.Rの体内にナイフを突き刺していく。

戻ってくる前にもしもの時のために護身用として購入したナイフだ。
ずぶ、と鈍い感覚を与えるそれからは、血が噴出す。

「身体などというものは所詮は殻に過ぎません。
 そんなものはムダなのですよ。
 凡人のように精神をコントロールしきれないモノにはひとたまりも無いでしょうが」
笑って言う彼に、克哉は微弱なうめき声を上げながら更に奥深くへ埋めた。

「あまり派手にやらないでくださいよ。
 再生に時間が掛かってしまうでしょう?」

黒いコートの裾から血がぽたぽたと滴り落ちて、部屋に紅い水溜りが出来た。
「<俺>は..オレが...守る、から...」
「貴方は本当に素敵ですよ。まあこれも想定の範囲内といったところですが...。
 器が壊れてしまった以上は、戻らなくてはいけませんね...」

ふわり、と床を蹴って瞬時に克哉から距離をとる。
Mr.Rによって支えられていたと言ってもいい克哉は、
彼が退いた途端に床に崩れ落ちた。
気を失っているようだ。
倒れた床に溢れていた血液が一気に克哉に付着した。
克哉が倒れた克哉を追った瞬間に、Mr.Rは消えていた。
「...ありがとな...」







************************ 反省部屋

長らくお待たせいたしました。
考えた末の結果がこれですだ。
ってか死んでないのですぐ現れるじゃねえか。

行き当たりばったりの長編でホントすみません。
ご利用は計画的にです、ホント。
克哉に刺させちゃったよ!!

「和泉。お前が刺されるべきだったんじゃないのか」
はい、ごもっともなご意見ありがとうございます。

続きます。

十六話は早くup予定です。
何故なら今バイト前だからさ...。
明日には更新予定です。
何故なら既に続きはルーズリーフに出来ているからさ...







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