克哉が関西に出張することになった。
御堂はもちろんそれを好まなかったが、
上司の決断なわけで、そうせざるを得なかった。

「行ってきます」
「ああ、忘れ物はないな、夜必ず電話を」
「そんなに心配しないで下さいよ、
 たかが一泊ですよ。御堂さんのほうこそ、
 ちゃんとお昼も食べてくださいね」
「たかが一泊?」
「い、いえっ、そりゃ勿論オレも寂しいですけど、
 仕事は仕事ですから...」
悲しくも現実的な言葉を述べる。
勿論克哉も御堂といられないことは至極寂しい。
でもどう足掻いたところでなにも変わるはずもなく、
もう既に克哉は諦めていた。


現地に到着した克哉は慣れないその土地を走り回る。
「御堂さんに心配かけないように頑張らなくちゃ...」
脳内九割御堂。
ホテルに戻って来ても脳内は御堂で、
カバンを置いて携帯電話を取り出した。
殺風景な部屋で、自分ひとりしか居ない現状に寂しさを感じる。
生活のほぼ全てを御堂とともにこなす彼にとって、
久しぶりの1人だ。
「寂しいなぁ」
苦笑しながらそんなことを呟いてみる。
そう言って既に22時を回ったことを告げる携帯のメイン画面を解いて
電話帳から御堂の電話番号を繋げる。

「あ、もしもし? 孝典さん? 今家ですか?」
『ああ。そちらはどうだ、何か困ったことは...』
「大丈夫です、良好ですよ」
『そうか、ならいい』
「はい」
そう返して話題が尽きる。
相手の姿が見えないことが問題なのだろうか、
克哉は居心地悪そうに携帯を持ち替えた。

『克哉。今何を着ている?』
「え? まだ上着脱いだだけで」
再度沈黙が訪れたが、
それはすぐ解かれた。

『そうか、服の上から乳首をなぞってみろ』
「はっ!?」
『君の声が聞きたい』
「そんな、でもっ...」
『今晩は出来ないんだ、こういうのもたまには面白いと思うぞ?』
俗に言うテレフォンセックス。

触れと言われても触ることも出来ずにただ挙動不審をしていた克哉の胸を誰かが押さえつけた。
「ひぇっ」
振り返ると眼鏡を掛けた自分がいた。
「寂しかったんだろう?」
電話には通らないほどの小さな声で克哉の耳元で囁く。
くに、と乳首を摘まれて思わず声を漏らす。
「な、何で<俺>が」
向こうに聞えないようにマイクのところを手で押さえて言う。
「いいだろう、俺も退屈だったんだよ。
 ほら、御堂の言うとおりにするんだ。
 携帯手放すなよ」
「んっ...」
服のちょうどいいざらざら感が肌と摩擦を起こして絶妙な快感を起こす。
『もっとだ...』
電話の向こうの御堂はもう1人の克哉の存在に全く気付いていない。
「ぁあ...」
克哉としては、自分とのセックスを御堂に聞かれている感覚で、
とてつもない羞恥心に襲われる。
「たか...のりさっ...」
『下もか?』
下を触ることを許可され、<克哉>が克哉のペニスを刺激し始める。
「んぁぁっ...ひぃうっ...!!」
『相変わらず敏感だな...、私に触られてるいるのを想像しているのか?』
「ぅ、ん...ぁ...ぁあ」
適当に返事をする。
『自分で少し後ろも弄ってみろ』
「ぇ...ぁあうっ...!! んっ、んっ!!」
くちゅりとアヌスの入り口に指が押し当てられ、
挿入される。
「たかの、り...ぃっ」
思わず吐き出した言葉に御堂もびくりとする。
機械を通しての克哉の甘い声。
御堂としては機械にもこの声を聞かせたくないくらいだった。

「ほら、いつも御堂にはここをヤられてるんだろう?」
「うぅ...」
「ほら...もっと聞かせてやれよ...。
 所詮同じ身体なんだ、自慰行為にすぎないだろ?」
「オレはっ...孝典さんが...いい...」
<俺>じゃなくて御堂がイイという意味だったのだが、、
それを聴いた瞬間電話の向こうで御堂が頬を赤らめた。
「御堂がいい? そのわりには気持ちよさそうじゃないか?」
「んんっ、んっ」
もう既にアヌスに<克哉>のものが収まり、
激しい抽迭が行われている。
御堂と同じところを同じように攻めてきて、
本当に御堂に抱かれているような錯覚までする。
それでもやはり脳裏には御堂以外の人間に抱かれているという罪悪感が付き纏う。
「ぁううっ!!」
『イきたいだろう? 解放しろ』
「ぁあああああッ!!」
びゅっと白濁した液体を勢いよく放ち、克哉は達した。

「...ぁ」
『本当に君は可愛いな』
満足そうに笑う御堂。
愉しそうに嗤う克哉を横に、ドキドキしながら応答する。


「おやすみなさい」
そう電話を切って大きく溜息をした。

「なんで<俺>が」
「いいだろ、別に」
「良くない!! だってオレと同じ身体なわけだし、
 しかも眼鏡はもう...」
ケラケラと嗤いながら、ほぼ克哉の言っている事を無視する。
「寂しいんだろう? 俺が一緒に寝てやる」
「いやだ」
「素直じゃないな」
「素直だよ!! オレシャワー浴びてくるから!!」
そう言って克哉から離れた。


「オレは孝典さんが...」
御堂が大好きで堪らない。
御堂のことしか考えられない。
自分とは言え、他の人間とするなんて。

シャワーを頭から受けて、涙を誤魔化した。



風呂から上がると、
部屋は入室当時の静けさを取り戻していた。
誰もいない部屋。

その中で克哉は一枚の紙切れを見つけた。

『悪かった。
 御堂と上手くやれよ。
 お前はもっと自信を持て。
 お前なら俺がいなくてもちゃんとやれる。
 じゃあな』

「...ぇ...?」
乱暴に書かれたソレを見て克哉は驚いて誰もいない部屋で1人振り返った。





玄関を開けると、目の前に御堂が立っていた。
「あれ、早かったんですね」
「...」
「もしかしてずっとここで待ってたんですか?」
「...」
ふん、と鼻を鳴らすだけで御堂は何も答えない。
そんな御堂に笑みを漏らす。
「ただいま、御堂さん」
そう言って御堂に抱きついた。


もうきっと会えないけど、
オレ、<俺>に負けないくらい頑張ってみせるから















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後書きという名の反省

何か書き始めと趣旨が変わってる気が...
しまったー。眼鏡っ子、結局何しに来たんだ(爆死。
何かお決まりの尻ツボミ作品に。
締まりのいいケツです(爆。

テレフォンセックスとかエロいなぁと思って
先週から書き始めた。
だが。
エロいシーンが大変で(え?)
克哉に「いやだいやだ」と言わせると
みどたんにバレてしまうので、
抵抗させる事が出来ませんでした。


「君。能力のない人間はさっさと帰りたまえ」
うわ、す、すみません!!
いや、えっと...ううう...
「ちゃんとメモでもとっておけばいいだろう」
いや、その...突如思いついたもので
「大体今回だけじゃない。
 いつもいつも...全く進歩がないじゃないか」
腐ってますから。
っていうか御堂さん知ってます?
ヤりすぎるとマジでバカになるんですよ
「...!! な、」
達するときって脳に快感の刺激が爆発的に送られて
脳細胞が死ぬそうです。
私も自重すべきですが御堂さんも自重するべきだと
「佐伯!!」
「ハイ。何ですか御堂さん。
 俺もうコイツを相手にするの嫌なんですが」
うわ、眼鏡っ子に嫌われた。
「大体先日『キネマ』をエネマと見間違えたそうじゃないか!!」
その通りです、ハイ。
「...もういい、君の単細胞さは本多にも引けを劣らない」
えええええええッ
うそー!!
イヤァァ!!
次は頑張る、頑張るよ、御堂さん!!
「おまっ、俺を何だと思ってるんだよ!!」
ああ、本多。
このコーナーには初めてだね。やあ。
え? 本多を何だと思ってるかって?

丸ごとカレー?


「読んでくださりありがとう御座いました。
 お茶、淹れておきましたからね。
 皆さん仲が良いんですねえ^^」







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