「おい、何やってるんだ」
ロイドに戻ってきた克哉が眉を寄せた。
「何ってツリーの飾りつけ」
「そんなこと見れば分かる」
馬鹿にするなと克哉は眼鏡を中指で押し上げる。
「あ、<俺>もやる?」
「...そうじゃない。何なんだその格好は」
赤と白の格好は明らかにサンタだ。
「明日はクリスマスイヴだから」
「はいはーい、俺トナカイ!!」
奥からひょっこり顔を出した太一に、
ますます克哉は眉を顰めた。
「躾のなっていないトナカイには鞭で御仕置きが必要だよな」
「な、何それ!! 超俺いい子じゃんか」
ふん、と鼻で一蹴した克哉に克哉は苦笑する。
「(何でこの二人っていつもこうなんだろう)」
若干本多と御堂を思い出しながら、
すぐに思い出したように裏から紙袋を持ってくる。
「はい、<俺>。これ、衣装!」
満面の笑みで手渡され、
思わず受け取ってしまった眼鏡克哉は、中身を確認するまでもなく落胆した。
「オレとお揃いなんだよ〜」
えへへ、と照れ笑いする克哉に怒りをぶつけるわけにもいかずに、
眼鏡克哉は適当に太一に当たってみる。
「悪かったよー、そんなに着たくないなんて思ってもないから」
「思ってただろ」
帰り道、まだ鬱憤が晴らせていない眼鏡克哉に、
克哉は懸命に宥めようとする。
「帰ったら覚えていろよ」
不適に笑う眼鏡克哉。克哉は呆れて大きくため息をついた。
「ちょ、だからってこれはないだろ!!!」
「ああ、似合ってるじゃないか」
「いつの間にこんなの買ったんだよ!!」
帰宅するなりいつもの痴話喧嘩が始まった。
赤い衣装を身にまとった克哉は顔まで赤くして、
懸命に足元をスカートで隠そうと伸ばしている。
「は、恥ずかしくて死ぬ」
「ブレザーだって着たわけだ。もう慣れただろ?」
「慣れるか!! 大体こんなものにお金使うなよ」
「その分稼いでるんだ。文句あるまい」
「...う」
赤いミニスカサンタの格好をさせられ、
克哉は半べそをかきながら適当に座り込む。
立っているときよりも更に腿が露出し、敢え無く再度立ち上がる。
そんな挙動不審の克哉に、克哉はにやりと笑った。
「変態」
「俺が変態ならお前も変態だ」
「オレとお前は違うんだろう! そういうときだけ同一視するな」
笑いながら近寄る眼鏡克哉の頭をぐいぐいと押し返しながら、
克哉は呆れた。
「いい加減もういいだろ、着替えてくるから」
「脱ぐのか。なら脱がせてやる」
「いや、いいよ。幼稚園児じゃあるまいし自分で脱ぐから」
「素直になれ」
「いや、オレは素直だ」
眼鏡克哉の手を払おうとして、掴まれ、ぐいと引き寄せられた。
急に二人の間にあった空間がなくなり、抱き寄せられ、
ドキリと克哉は顔を赤らめた。
「何だ。やっぱり期待してるんじゃないか」
「し、してないって!! 馬鹿!」
ぎゅうぎゅうと眼鏡克哉の胸を突き放そうと押してみるのに
予想以上の彼の力にびくともしない。
「お前がクリスマスプレゼントなんだよな?」
「勝手な解釈やめろよ」
「じゃあ俺がお前のクリスマスプレゼントになってやる」
真面目な顔で柄にもないことを言われ、
思わず笑う克哉に克哉はムッとした。
「前者で決定だ」
「前者って..お、オイ!! うわッ!?」
何故同じ体、同じ筋肉量なのにこうも差があるのか。
そんなことを思いながら
いつもとまったく変わらないシチュエーションにため息すら出る。
「っていうかオレサンタなのに」
「いいだろ? 聖夜を性夜にってところだ」
「...」
ベッドに組み敷かれ、克哉が何も言わない間に唇を塞がれ、
ねっとりとした熱い舌が克哉の口腔内を丁寧になめ上げていく。
「っ...んぅ...」
単調ではない激しいキスによって、既に克哉の意識は朦朧としていた。
舌を強く吸われ、ジンとした痛みが舌に走る。それすらも快感。
唇を啄ばまれ、キスが終わると名残惜しそうに二人の間を銀の糸が伝った。
「...<俺>...、ふ、ぁあっ」
衣装の上から乳首を摘まれ、甘い声が上がる。
キスの興奮により、ぎりぎりと起ち上がった乳首を、克哉はくりくりと服の上から弄ぶ。
「も、もっと...弄って...」
直接舐めてもらいたくて、克哉は体を捩った。
「駄目だ。それは着たままだ」
「そ、そんな...ぁ...」
「こっちも勃っているようだしな」
「ぁあんっ、...ひっ」
腿の方から厭らしく足をなぞりながら手がスカートの中に侵入してくる。
下着だけを取り除き、スカートをひらりと捲り上げた。
「そ、そんなに見るな、よ...」
手でスカートを再度伸ばし、性感帯を隠そうとする。
しかし眼鏡の奥の瞳が欲望を帯びて光っているのを見て、
克哉は尚更興奮した。
「見られているだけでこんなに濡らして」
「だ、だってぇっ...」
「隠すな」
無理矢理克哉の手を解いて、頭の上で固定した。
「っぁん、ゃああッ、」
じれったくペニスの先を指の先でなで上げる。
「はぁッ...、も、もっとぉっ...!!」
それでもにやりと笑ったまま克哉は焦らし続ける。
克哉は我慢できなくなって自分で腰を揺らし、自分のイイところに克哉の手をこすりつけた。
「ヤラシイ奴だ...」
「っ...ふぁ...」
聞こえているのかいないのか、克哉は腰を揺らしながらただただ喘ぐ。
「俺はお前を貰うとして...お前に俺からプレゼントをやろう」
「ふ.....プレ...ゼント?」
視点の定まらない虚ろな瞳で克哉はゆっくりと克哉の手の中の物をみてみる。
それが何か理解するのに数秒かかった。
悦楽によって脳が鈍っていたわけではない。
克哉の手の中にあったのは、いわゆる大人の玩具であり、
腿枷を首からベルトで繋ぐタイプの拘束具や、
アナルボールと言われるような、まだ克哉の見たこともないような道具が用意されていて、
頭の中が真っ白になった。
今までも確かに道具は使ってきていたが、
ここまでレベルアップされるとグロテスクなものである。
「やっ...、やぁッ!! お前っ...、ほんっと、非常識!!」
「お前だって自分で人の手に擦り付けるくらいの淫乱じゃないか?」
「それとこれとは話が別!! 無理だって!!
それにオレは...道具、とかじゃなく、て...」
勢いで言ってしまって途端に顔を赤くした克哉に、
克哉は目を細めて満足げに笑う。
「道具とかじゃなくて何なんだ?」
「...っ、わ、分かれよ...」
「分からないなぁ...」
意地悪く笑う彼に、克哉は頬をりんごのように赤く染めながら呟いた。
「馬鹿...お前のがいいんだよ...、っ、ん、ふぅ...」
言葉が終わると同時に、唇が重なる。
にやりと笑みを浮かべた克哉は満足そうで、嬉しそうで。
「それじゃあご希望に応じて」
「ぅん...」
「ホントお前非常識!!」
「は」
朝から喧嘩が勃発する。
「お前が俺のがイイって言ったんじゃないか」
「だからってこんな...立てなくなるくらいやるなよ!!」
「もっとって言ったのお前だぞ」
「...っ、し、知らない!!」
ぷいと体の向きを変えて壁を見るように横になってしまった克哉。
「しかも布団洗わなきゃ〜」
半べそをかいている克哉の髪を後ろから撫でた。
「何」
「俺も手伝ってやる」
「...お、<俺>...」
不貞腐れていた克哉がくるりと眼鏡克哉のほうを見た。
「<俺>...手伝わない気だったの?」
信じられないとまた壁側を向いて布団を被ってしまった。
克哉は溜息をついて、<オレ>が強くなったのか、俺が弱くなったのかと、自嘲的に笑った。
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後書きという名の拷問部屋
お久しゅうございますわ、眼鏡。
「人を部位で呼ぶな」
私なんでこんなところにいるのかしら、
おほほほほほ〜
「クリスマスあんま関係ないし」
あら、黒ノマ!!
「大体オレばっかりなんか...
サイト説明にはオレ溺愛みたいなことかいてあるけど
実際凄い苛められてる気がするんだよね」
まさか!! もうむっちゃ愛を注いでるんですけど。
それってヘタレっ子が鈍感なんじゃん?
「はーい、今日は何にしようかな。
アイアンメイデンってもうやった?」
鉄の処女!?!?
いや確実に死ぬでしょ。
っていうか中世ヨーロッパで刑罰や拷問に用いられたとされる拷問具だし。
え、爽やかにスルーやめてください。
っていうか笑顔で迫ってこないでーーー!!
ぎゃあああっ、
アイアンメイデン内に追い詰められた!!
し、死ぬううううううううッ!!!!!
閉じないでええええ!!!!
没
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