「御堂部長」
「何だ」

克哉がMGNに来てから既に一ヶ月が経過していた。

こちらでの仕事も慣れ、克哉はキクチにいた時とは全く異なる生活を送っていた。

「御堂部長、大隈専務がお呼びです」
「専務が? ありがとう。...ん? 何故私に直接言わない?」
電話もあるだろうに。と御堂は眉を顰めた。
「え? 忙しいとおっしゃってました」

当の本人は克哉と少しでも話したくて
わざわざ御堂にではなく克哉に伝言を頼んだのだ。



「御堂部長」
「何だ」

「このお菓子、斉藤さんに貰ったんです」
「何?」
「お土産だそうですよ」

いや、この菓子は普通に赤坂の方で売っていた気がする。
明らかに、克哉の気を引こうとしていること間違いない。



「御堂さん」
「何だ」

「これ、お土産のワインです」

「ワイン? どこへ行ってきた?」
「昨晩、前一緒に飲みに行かせて頂いた、御堂さんの友人さんとまたレストランへ行ったんです」
あまりに無邪気な笑顔を見せるものだから、
怒るに怒れない。

そこで不図気付く。
怒る?
何を怒るのだ?

そこで自覚した。
自分がものすごく、嫉妬しているということに。

「御堂さん?」

そして、会社の中にも外にも、ライバルが多いということに。


「本当に君は...」

「?」


抱き寄せて頬にキスをする。
「御堂さん!?」
「お前は私だけのものだ」
「...へっ!?」
「本当は誰にも見せたくないのだ、お前を。
 だが、それでは困るだろう?
 だから、誰にでもいい顔をするんじゃない。」
「そんな顔してませんって」

無自覚な彼に溜息をつく。

「それでは...お前は私のものだという印をつけておかなくてはいけないな」
「印?」
御堂は克哉の首筋に、唇を押し当てる。
「いたっ...あ、ちょ、御堂さん!!」
「これで、問題ない」

「問題ないって...大アリですよ!! 見えちゃうじゃないですか!!」

「見えなくては意味が無い」
自分のモノだ、誰も近づくなという印。
真っ赤になりながら赤いキスマークを抑える克哉を満足そうに眺める御堂。

翌日の社員達の顔と言ったら...
御堂はその優越感に浸り、柄にも無く一日中満足げに笑っていた。






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