いっつもオレだけやられていて、ずるいような気がする。
バレンタインを目前にしてそんなことを考えていた。
御堂さんの善がる声って聞いたことあんまりないし。
「っく..」とかそういうレベルだし...。
それに引き換えオレはいつも...
というところまで思考が至ってしまい自己嫌悪した。
この年になって手作りチョコレートというのも
女々しすぎるイメージがあったので、オレは適当にネットでチョコレートを探していた。
「...ん？」
どこをどう飛んだのか分からないが、
媚薬入りのチョコレートというものを発見して、
オレはつい好奇心と興趣が湧いて、購入してみることにした。
「孝典さん、これ、バレンタインのチョコレートです...」
「ああ、そういえば今日はバレンタインだったな。
ありがとう、克哉」
孝典さんがチョコレートを食べてしばらくして...
「...克哉？ この部屋暑くないか？」
「そうですか？ ちょうどいいですが...。熱でもあるんじゃないですか」
孝典さんの額にオレの手が触れる。
熱い肌に、ひんやりした手が触れて、孝典さんはピクンと体を振るわせた。
「...か、つや...。なんだか...おかしい」
孝典さんの瞳が紅く色気づいていて、
オレはそんな孝典さんの頬を撫でてキスをして。
孝典さんの荒い呼吸が部屋に響いて、
オレはそのまま孝典さんを押し倒しちゃって
*
回想終了。
「綺麗だろうな...」
「何が綺麗なんだ？」
突然背後から声がして慌ててブラウザを閉じた。
いつの間にか帰宅していた御堂は悪戯に笑って、克哉に顔を寄せた。
「何が綺麗なんだ？ そんなに慌てて...、厭らしいサイトでも見ていたのか？」
「まっ、まさか!! そんなサイト見たって孝典さんが載ってるわけじゃないですし...」
言って、自分が物凄く恥ずかしい台詞を言ったことを自覚し耳まで赤くなる。
「だが、ここは既に...、何かを訴えているようだが？」
「っ...!!」
回想によって興奮した。
「ちょ、ちょっと孝典さんのこと...考えて...て...」
嘘ではない。
少しばかり非現実な妄想をしただけだ。
「君は本当に可愛くて...淫乱、だな」
「そ、そんなことっ...」
顔が真っ赤になっているのだろう、
慌てていると、孝典さんが突然キスをしてきて、オレの唇を塞いだ。
「っ...ふ、ぅ...」
「..そんなこと、あるだろう？」
「...う...、ず、ずるいです...よ...」
そのままオレが気絶するまで交わって、朝を迎えた。
いつもオレばっかり先に気が遠くなっちゃって、
何となく罪悪感すら感じる。
たまには孝典さんを凄くよくしてあげたい。
重たい腰を労わりながらシャワーを浴び、
朝食の支度をした。
バレンタイン前日、宅配便でチョコレートが届いた。
明日は帰ってきたらこれを渡して、
と綿密な計画を練る。
まだ成功もしていないし、その効果がどのくらいのものかも分からないけれど
溜息が出るほど緊張する。
そして今。
渡した―――ッ!!
そして孝典さんが食べたぁぁぁッ!!
と心の中で激しい実況中継をしながらひたすらに孝典さんの変化に注目する。
「どうかしたのか？ 克哉」
「あ、いえ、何でも。美味しいですか？」
「ああ、克哉も食べてみるといい」
ここで食べたら意味がない。
遠まわしに断ると、薬にはやはりそれなりの効き始める時間というものがあるだろうと、
今のうちにシャワーでも浴びてこようと思って、バスルームに向かった。
緊張はマックスだ。
それなりにネットでテクニックも覚えた。
頑張れ自分!!
と掛け声を掛けたところで
突然ドアが開いた。
「...え？」
目の色を変えた孝典さんが立っていて、
しかもはあはあと息も上がっている。
「急に今すぐ克哉が抱きたくなった」
えええええええええええええええッ!!!!?
「た、孝典さ...!? んぐっ...、ちょ、ぁ...ま、待ってっ...!?」
待 っ て く れ な い
「ぁっ...、ちょ...えっ...!?」
シャワーを止めて、
唐突に甘い匂いがすると思ったら、
オレの体にチョコレートが垂らされていて
オレの買ったチョコレートが孝典さんの体温で溶かされて
体を伝い落ちる。
「ほら、私の指に付いたチョコレートを舐めて」
べっとりと汚れた孝典さんの指が口の中に入ってきて、
かき回される。
甘ったるい。
「ふぁ......」
孝典さんはこの中に媚薬が入っていることに気付いたのだろうか？
「ぁ...ん、たか、のり...さ...っ...そんなっ」
孝典さんはチョコレートの付着したオレのを、舐め始める。
とてつもない快楽だ。
「ぁ...もっ..と...」
無意識にオレの口から溢れた言葉に驚いた。
体が熱くて孝典さんが早く欲しい。
..さっき孝典さんにチョコレート舐めさせられたから？
「厭らしい顔をして..私が欲しいのか？」
孝典さんの声が凄く遠い。
頭の奥で聞こえる孝典さんの声に必死に頷いて、
もっと近くに居てとしがみ付く。
「生憎焦らすこともできない...が...」
相当御堂さんもキているのか、
いつもなら意地悪して焦らすけれど、すぐにオレの中に入ってきて
「もっ...無理......っ」
*
イきそうになったところを御堂に阻止され、
苦しそうに克哉は喘いだ。
「もっと私を愉しませろ」
「っ...」
体中が御堂を欲してたまらない。
視覚も聴覚も感覚も犯され、
嗅覚はチョコレートの甘い香りで犯され、
克哉は既に意識朦朧としていて、
御堂の言葉に何を返答していいのかも分からなかった。
「ぁ...ぅ...」
御堂のペニスが克哉から抜かれる。
寂しそうな声を漏らした克哉を、壁に向かわせ、手を付かせて尻を突き出す形にさせた。
後孔まで良く見える。
御堂はヒクつくそこを目を細めてみてやる。
「み、見ないで...、くださ...い」
「見られて喜んでいるようだが？」
「..いい、から...早く孝典さんのが...欲しい...です」
恥ずかしそうに呟く克哉の腰を掴み、再度アヌスに挿入し、奥の奥まで貫いてやる。
後孔の周辺に垂れたチョコレートがナカまで入ってきて、
催淫剤の役目を果たして御堂のモノをどんどんと奥へ導く。
「そんなに食いついて...、本当に君は厭らしい」
「あっ...ひぅっ...、」
内壁が酷く痙攣し、全身もがくがくと震え始めた。
「も...、イか...せてぇぇっ...!!」
腰を揺らしながら、浅ましく強請る克哉。
御堂は動きを止める。
「た、かのり...さん...？」
「だめ、だ」
「...ぇ...」
「君はもっと...気持ちよくなれ」
これ以上よくなったら、頭がどうかしてしまう。
「むりっ...無理...あああッ!! はっ...あんっ、やぁぁッ」
「絶対にまだイくんじゃない」
無理な命令を突きつけられ、克哉は頬を涙で濡らしながら快感に溺れる。
許容量をはるかに超えた快感は既に苦痛ともいえる状態で
「も...、おかしくな...」
溶けそうだ。
「ああんっ、あぁッ...!! 孝典...っ...、もう死んじゃっ...」
「っく...、私も...もうっ...げんか..い」
御堂が克哉の中に突然精液を放った。
熱い液体が注がれて、克哉の体がびくんと跳ねた。
ようやくペニスの拘束が解かれ、続いて克哉も達し、くたりと壁を伝ってゆっくりと倒れこんだ。
「...ぇ...」
先ほどからあまり時間は経っていないようだ。
いつの間にか場所がバスルームから御堂のベッドに移動をしていた。
「まだ...だ」
「そ、そんな...無理っ...、イったばっかりなのにっ」
とんだことをしたと思った。
御堂に媚薬はいけないという教訓を得たがもう遅い。
歯止めの効かなくなった御堂が悪戯っぽく笑う。
ただでさえ息が上がって酸欠に近い状態なのにもかかわらず、
御堂は克哉の口を塞ぎ、噛み付くようなキスを続ける。
克哉の舌を吸い上げると、克哉は体を震わせて全身で反応した。
「ん...、たかの...り...さ...、ぅ..」
快感に溺れ、生理的な涙を目にためた克哉は、
そんな虚ろな瞳でぼんやりと御堂を見つめながらただただ与えられる悦楽を飲み込む。
もっと欲しい。
そう思うのは媚薬が効いているからだろうか、
それとも本能なのだろうか。
密着した体。
体を伝い落ちる汗。
軋むベッド。
御堂は唐突にその抽迭を止めた。
「...んぇ...？」
切なそうに声を漏らした克哉は、
放心状態に近い瞳で、御堂の真意を窺おうとする。
また御堂が笑う。
「孝典さ...、ぁあうッ!?」
不意打ちを食らった。
唐突に御堂は克哉の、先走りと一度の射精でぐっしょりとだらしなく濡れたペニスを口に含んだ。
そんな分泌液を漏らし続ける鈴口を舌の先で突付き、紅くなった亀頭を口に入れる。
歯を立てて陰茎を刺激してやりながら、角度を変えて吸い付き、咽頭の奥へと導こうと口蓋に亀頭を擦り付ける。
今までも口唇奉仕というものをされることはあったが、
割合的には少ない。
熱い口内、しかも御堂の口の中に自身のそれが納まっているのかと思うだけで
気がおかしくなりそうだ。
「もっ...でるッ...」
「出せ」
卑猥な水音をたてながら啜られて、耳の奥までおかしくなりそうだ。
「はっ..、はぁっ...、んッ」
「君の味がするな。早くイけ。次は私の番なんだからな」
尿道口を攻められて、更に舌がそこから侵入してくる。
最終的に吸い上げられて、克哉は達してしまった。
ハッとして御堂の顔を見た。
「す、すみませんっ」
思い切り御堂の口の中に放ってしまって、罪悪感が満ちてくる。
御堂の喉がごくりと鳴って、自分のを飲んだのだと知れると、
とたんに今度は羞恥心が襲ってくる。
「克哉、今度は舐めてくれるだろう？」
「は、はい...」
御堂の股間に頭を埋めて、勃起したそれを舐める。
達したばかりだというのに、舐めているとまた更にいやらしく自分のものが起っていくのがわかる。
「ぁ...」
ベッドに腰掛ける御堂に対してフローリングに跪いて奉仕する克哉。
そんな克哉の耳を御堂がゆっくりと指で塞いだ。
途端に脳内に自分が立てている水音が反響して、ますます官能的な気分になる。
「んっ、ふぅッ...」
ぴちゃぴちゃと厭らしい音をたてながら、
御堂のそれに吸い付く。
口の周りに自分の唾液をたっぷりとつけながら、無我夢中でしゃぶる。
「っ、...ん...」
御堂から吐息が漏れた。
その色っぽい熱い声に克哉もドキっとする。
「上手くなったな...」
「〜〜っ」
「もういい、早く...君の下の口に挿れたい」
克哉が御堂のペニスから口を離すと、名残惜しそうに銀色の糸が伝い落ちた。
「いやらしい顔だ」
にやりと笑うと、ベッドに克哉を仰向けにさせ、足を大きく開かせた。
「ここをこんなにヒクつかせて...」
「いわ...、ないで...」
「舐めながら、これが自分のここに入るんだと考えていたんだろう？」
指をアナルの入り口に押し付けてやる。
ソコは既に御堂のものを求め、痙攣させながら、
そこに触れた指をも飲み込んでしまう勢いだ。
「っ...、はや...く、ほし...」
イきたくて苦しそうな声を上げた克哉。
もう何度も射精しているのに、御堂のものを舐めただけで、興奮して、大きく勃ちあがっている。
「ああ...私も......ナカで...」
ぐ、と何の合図もなしに克哉の体を貫いた。
「あああああッ!!」
大きく克哉の体が撓った。
何度もイって、この上なく敏感になっているソコから、気が遠くなるほどの快感が襲う。
それでも、もっと欲しい。
足りない。
もっと、もっと。
自分で腰を揺らしながら、自分のイイところに擦り付ける。
「今日は...いつにも増して...っくッ...」
薬の所為だと分かっていても、
もうそれどころではなく、
二人はついに限界を向かえ、達したのちに克哉は気を失った。
気が付いて、再度意識が飛びそうになった。
自分がしたことに対する、壮絶な羞恥心。
「（い、いくら薬のせいだからって、そ、そんな...）」
しかも、結局御堂の上に、という計画は丸潰れで、
その計画の存在証明は微塵もない。
どう足掻いても、御堂の上には乗れないのかもしれないと
今のこの腰の痛みと同じくらい痛感した克哉であった。
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