「ちょ、え!?」
朝から素っ頓狂な声をあげる克哉の目の前に立っていたのは、
眼鏡をかけた自分だった。
「何をしている」
「何をしてるって..、
それはこっちの台詞だよ!!
なんで＜俺＞がいるんだよ!?」
「いや、それは俺の台詞だ。
何故＜オレ＞がいる...？」
当然というべきか、互いに思っていることは同じらしい。
**
あまり状況がつかめていないまま、
まず争ったのがどちらが会社に行くかであった。
「いいよ、オレが行くから＜俺＞は家にいて」
「お前は莫迦か。
ああ、間違えた。お前は正真正銘の莫迦だったな。
俺が行ったほうが明らかに効率がいいに決まってるだろう？」
「だけどーッ!!」
「それじゃあ、留守番よろしく頼む。」
「はっ、ちょ、待て、＜俺＞!!」
結局眼鏡の自分に丸め込まれて留守番をするハメになった克哉。
「大体なんで＜俺＞がいるんだよ...」
静かな部屋に自分の大きな溜息が響く。
そこにカツリと足音がした。
「どろぼっ!?」
バッと顔を上げるとそこにはMr.Rが立っていた。
明らかに不法侵入。
「おはようございます」
そういえば彼から聞く挨拶といえばいつも
「こんばんは」
だったので、少しばかり違和感がある。
「は、はぁ...おはようございます...」
「どうです？」
「何がですか」
「二人になられて」
にっこりと爽やかな笑みを見せ付けられて、
ああ、全ては彼の所為かと確信しつつも
実は最初から彼の所為だと分かりきっていたことにまた溜息をつく。
「何故...」
「昨日おっしゃられたじゃないですか」
「何を...？」
「自分が二人いれば、と」
そういえば昨日は、仕事の量がいつもの倍以上あって、
皆猫の手も借りたいほどにフル回転であったので、
確かに帰り道にそんな夢のような事を呟いたかもしれない。
しかしそれは実現不可能な願望を理解したうえでの発言であり、
まさかそんなことが現実になるとは思ってもみなかった。
「まだ慣れないからお気に召されないのでしょう。
数日も経てばきっと、この状況が気に入られるでしょう」
そんな莫迦な。
なんとなく眼鏡をかけた自分が怖い気がするし、
きっと自分のすることすることに文句をつけられそうだ。
「そんなことありま...」
せん、といいかけて顔を上げると、すでにそこには誰もいなかった。
*****
「...なんだ、これは」
絶対にいつもの夕食のメニューでは文句を言われると読んだので、
今日は本屋でレシピ本を購入して、豪勢に作ってみた。
しかし帰ってきて早々、彼の表情は歪んでいた。
「いや、時間に余裕があったから、作ってみた...んだけど...」
内心泣きそうだった。
「お前は全く...」
小さな食卓を指差されて、
きょととそれを見直し、恥ずかしくなった。
関連性無さすぎ!!
和洋折衷なそれらに、つくづく自分の駄目さを思い知る。
「ごめん、＜俺＞」
しゅんとなる克哉。
「不味かったら犯すぞ」
「え？」
不味かったらということは食べてくれるということだ。
「う、うん」
克哉は、眼鏡をかけた自分の口に入っていく料理を見送りながら、
じっと感想を待った。
「...食えなくは無い」
「...え...」
そっけない感想。
それが彼らしかったりもする。
「お前。仕事なんかするより家業のほうがむいてるんじゃないのか？
このまま一生家事だけしていろ」
「はっ...!? なんだよ、それ」
眼鏡をかけた自分のさり気無いプロポーズにも気付かないまま、
そこからまた口論が始まる...。
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何か続きそうだ...、あはは（爆。
眼鏡はヘタレのことが大好きだといいです。
ヘタレは眼鏡を怖がってればいいと思います。
とにかくヘタレ万歳（それで片付けるな）
ってか、眼鏡克哉ってツンデレなのか？
ツンデレになっちまったけどヽ(;´Д`ヽ)(ノ;´Д`)ノ
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