美裕と葉月が夢中になれるもの、といえばあそこだ。
地下にあるゲームセンター。
祐李は皆でゲームをしようとさり気無く誘うと、
そこで卓球の勝負を持ちかけた。
美裕は卓球が上手い。そして、葉月も。
「負けられっか、女になんか!!」
「男に負けられるわけないでしょ!!」
ものすごい、醜いバトルが始まった。
「(見たか、俺様のシナリオすげー)」
「凄い、葉月も美裕さんも頑張って!!」
「華月さん、危ないからちょっと離れててねー」
ギャラリーも集まるほどの互角の戦いは長く続いた。
「頑張ってー(←ちょっと飽きた)」
「華月、部屋戻らない? ちょっと携帯忘れちゃった」
「ん? あ、うん」
浴衣でぱたぱたと歩く姿がまた萌える、なんて思っている祐李だが、
あくまでポーカーフェイスに爽やかスマイルをかましている。
バックミュージックとして思い出して欲しいのが
男は狼なのよ、気をつけなさい〜♪
年頃になったなら慎みなさい〜♪
羊の顔していても心の中は〜♪
狼が牙を剥くそういうものよ〜♪
って、古いですか、通じなかったらスミマセ(爆。
「携帯取った? 早くしないと二人の試合終わってるかも」
Uターンをしようとした華月の手首を握った。
華月はビクッと反応する。
その左手首は、若干リスカの痕が残っているから。
そのまま引き寄せられ、抱きしめられる。
華月の心臓は恐怖で怯えていた。
リスカがばれて、今まで怒られなかったことはなかったから。
強く目を瞑った。
「――っ!?」
突然の感覚に華月は目を開いた。
「んっ、ちょっ」
「華月..好きだ...」
「へっ...?? ...じょ、冗談キツイって、やめよっ、早く二人のとこ戻ろう!?」
「本気だよっ...」
華月の目の色が変わる。
「駄目っ、僕は!!」
僕は人間ではないから。
華月は目を逸らした。
「っひ!!」
唐突に抱きしめられて気付く。
祐李のソレが勃っている。
「ゆ、祐李!!」
「悪いようにはしないから、ホント。てか、一種の自慰だと思ってくれていい」
「じ、自慰って...ッ!!」
ってか自慰って自分でするから自慰なのである。
「一回、一回でいいからっ」
「一回って...ッ!! ちょ、うわ!!」
押し倒されて、首筋に強く唇が押し当てられた。
「嫌だっ、祐!!」
「...痕ついたらバレるか...」
そういうと唇を離し、浴衣を肌蹴させて胸の突起を舌で弄り始める。
「っ!? そ、そんなとこっ...!!」
「気持ち、いいでしょ?」
唇を噛み締め、首を横に力なく振る。
「声出して大丈夫だから」
そういってキスをし、強く結ばれた口を解く。
「ぁっ...ぅ...」
ピクンピクンと時折震えていた身体が、
突然大きく反応した。
「だめッ、嫌だっ!!」
自分のモノに触れられて華月は大きく身動ぎした。
逃げようともがくが、力が入らずすぐに捕らえられてしまう。
「ひぅッ...ん...」
快感でだんだん何も考えられなくなっていく。
それでも脳内には一つだけ、残っていた。
自分が人間ではない事を祐李は知らないということ
祐李は、華月に嫌われることを承知で告白し、このような行為に至っている。
自分も、彼に嫌われることを承知で、人間ではない事を言うべきなのか。
激しく動いていた祐李の手が止まる。
「...ぇ...?」
唐突の虚空間に華月は僅かに寂しそうな声を漏らす。
ところがそんなこともつかの間、
祐李が唐突に華月自身を口に含んだ。
「あああッ、あんっ..だめっ、キタナイから...!!」
キタナイから。人間ではないから。そんなところ、舐めないで。
「全部受け入れてあげるからっ...、華月の全部」
華月の抵抗が止んだ。
全部を受け入れてくれる。その言葉を信じてもいいのだろうか。
華月は一筋の涙を零した。
華月が達して、その後部屋の隅で一人でヌく祐李。
ヌき終わって祐李はすまなそうに華月の方を振り返った。
華月もまた、祐李をすまなそうに見つめていた。
「あの、さ...、祐」
「...ん?」
「ずっと、隠してきたことがあるんだ」
震える声を絞り出して、喉の奥から潰れた音を発する。
まだ泣いてはいけない。
「僕さ、にんげ」
人間じゃないんだと言おうとして。
ばったーん!!
「華月さん、大丈夫!?」
「華月!!」
勝負を終えたのか、ただ単純に正気に戻ったのか、
二人が息を切らして戻って来た。
「ちょっと祐李!! あんた華月さんに何もしてないでしょうね!?」
「してないよ、何にもしてない」
何もしてないと言ったのは華月で、それに祐李は驚いた。
「ね、祐。テレビ見てたんだもんね」
寂しそうに笑うから、
祐はその原因が分からずに、きっと自分が華月を追い込んでしまったのだと胸を痛めた。
***
その日の晩は、枕投げやらをして、
結局美裕が華月の横で寝ることになり、
部屋を襖で仕切って、華月と美裕、葉月と祐李のコンビで寝た。
寝たと言っても、祐李と華月は全く眠れなかったのだが...。
朝日を目の前に、華月と祐李は疲れた顔をして立っていた。
「どうしたの、華月さん!! 私が横じゃ眠れなかった?」
「美裕、お前自意識過剰すぎでしょ」
「あんたもどうしたの。そんなに華月さんと二人で旅行したかったの?」
「...そんなんじゃない」
結局重たい空気のまま、四人は鎌倉を出て、近所の駅で解散。
ゴールデンの週間は、まったく黄金でなく終わったのだった。
前/次
戻る