ゴールデンウィークが近くなった。
高2のゴールデンウィークは、高校生活最後の黄金週間である。

黄金の国ジパングらしいその一週間は、恋人同士にとってもかなり重要な期間なのでは?


「華月...ゴールデンウィーク暇なんだ...」
手洗い場に奇妙な演技じみた声が響く。
「ああ、駄目だ...暇だから暇つぶしに誘ったみたいな感じになっちゃう」

演劇部トップクラスの祐李は
自分のアンナチュラルすぎる演技に絶望していた。

舞台演技は大げさすぎてナチュラルさには欠けるのだ。
「ゴールデンウィークに鎌倉に行かない?」
「鎌倉に誰と行くの?」
唐突に後ろから声がして振り返ると華月だった。
本人に練習しているところを見られてアンナチュラル極まりない。

「華月、空いてる? 空いてる?」
「うん、空いてるよ。もしかして僕?」
「そう、そう」
「鎌倉かぁ、行きたいね。行く?」
「...ねえ、いきたい、って言って」
「ん? 行きたい」

何をしているのやら、祐李は上機嫌で教室に踊りながら戻っていった。



***


「ちょ、」
「ん?」
「何で葉月と美裕がついてくるんデスカ」

「いいじゃない、ケチ」
「ちゃんと出費は自分達でするしよ」

「そういう問題違う!! ってか当然だろ!!」


結局四人で行動する事になり、
まず旅館に到着した。

「祐李にしてはまあまあなところじゃない」
「あ、すみません〜、二名追加でお願いします」
魂の抜けた祐李は、しばらく落ち込んでいたが、
華月が楽しそうにしているのを見て、少し元気になった。


しばらく観光をして、鶴岡八幡宮に行ったり、芋ソフトを食べたりした後、
旅館に戻る。
「(本当はここでにゃんにゃんする予定だったのに)」
畜生と叫びながら、はたと部屋を見回す。
「そういや美裕お前同室でよかったの?」
「華月さんの横で寝るから」
「は」
「華月さんいれば安心だもの。私も華月さん守るし。ってかお前なんかしたらぶっ殺すぞ」
祐李灰化。

浴場に行き、ますます自分が情けない。
「(ああ、何で...こんな...生き地獄だって...)」
風呂好きの柏木兄弟ははしゃぎまくり。
「(華月が...あんな...無防備な...)」
そこで少しばかり立ち直る祐李。

「なんとしてでも二人きりになるッ!! 見てろ」
ちなみに祐李、こんな変態の癖に、成績は上位3番目までに入る天才である。

よく言うあれだ、
天才と変態は紙一重。



ここから祐李の巻き返しが始まる。






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