人間とは違う。
少しの差じゃない。

綺麗な言葉に纏め上げれば、それは超能力のようなもの。


見えないものが見えたり、
それと話せたり、
傷が瞬時に治ったり、
体内にものの怪を取り込めたり。


「ねえ、カヅキ」
小さな声で呼びかける、体内の、ものの怪。

『ん? どうした?』
華月の声に怪訝そうに返答するカヅキは、
あくまで華月を心配していた。
「ごめん、なんでもない」
自分でも何を言おうとしていたのか分からなくなってしまって謝る。
『謝るなよ...、』
気まずくなって沈黙が走る。


結局次の日もその次の日も美裕とは話さなかった。
目もあわせてもらえなくて
笑ってももらえなくて
華月はただ彼女の後姿を見ているだけ。

「華月」
「ん?」
「何かおかしい」
「何も無いけど」
そう心配してくれる祐李に華月は笑ってみせる。

「そう? なんか、寂しそうだから」
ちくりと痛んだ胸。
ぽっかりと空いた穴。

只でさえ薄かった華月の心の鏡が
悲鳴をあげた

それでも、きっと、まだダイジョウブ。



隣に住んでいた老父が華月に教えてくれた。
人の心は鏡だと。
その心は磨けば磨くほど正しく世間を、
正しく真実を映し出す。
人の心の中までも。

磨かなければ何も映さない。
しかし、磨けば磨くだけ、鏡は薄くなり、そしていつか、割れる。
辛い思いをすればするだけ、
表面は削られて美しくなっていく。
そして薄く脆くなっていく。



明日こそ自分から声をかけよう。
ちゃんと話せば何か分かるかもしれないと
華月は布団に入った。

そんな目標を掲げて学校へ行き、
美裕が来るのを待っている。
「美裕さっ..」
美裕と共に居たのは強面の男子で、
華月は驚いて若干退いた。


美裕の中に知らない美裕を見つけた。

ずっと友達だと思っていた。
友達って何。
話す人?
よく話す人?
一緒にお昼を食べる人?
一緒に居る人?

友達って何。


華月は、逃げた。

知らない美裕が怖かった。
そして、それは自分が人間ではないからいけないのではないかと、思い至った。

自分が不幸そのもの。
自分が不幸を作り出す。

自暴自棄のスパイラルが始まる。


席に乱暴に座ると、適当に机の中から本を出し、バラバラと読み漁る。
単語なんて入ってこない。ただ五十音と漢字の羅列で、
それすらもいつの間にか見えなくなった。

「ぁ...」
小さな呼吸音が漏れた。
何か身体の異変に気付いた。
「な...」
唐突に胸が痛んだ。
ちくり、とはいえないレベルの鋭い痛みだ。
「ぅッ...」
胸を押さえて蹲る。
「ぐ」
胸に何かがこみ上げて、口を押さえた。

口から溢れ出たのは真っ赤な血だった。


教室から悲鳴が溢れた。
手で押さえても指と指の間から漏れる血は留まることを知らなくて
身体中の血液が抜けてしまうのではと思うほどに溢れ
華月が読んでいた本は血を吸って不気味に膨らんでいる。
足元には血の水溜りが出来、
制服も何も真っ赤だった。

「かづっ」
葉月が駆けつけ、華月に触れようとした。
「 」
言葉にならない。
それでも、懸命に葉月を


拒んだ。

胸の痛みの次は背中に痛みを感じた。
「ぁ...」
冷や汗が零れる。
華月は絶え絶えな意識を奮い立たせて
教室から駆け出した。
「華月ッ」
廊下に点々と残る血痕。
静まり返った高2教室。

「え、今の誰?」
「柏崎サン。華月のほう」
「えー、どうしたの??」
「ヤバイってあれ」
時が動き始める頃にはそれこそ教室中大騒ぎで、
教員も駆けつけた。
しかし誰も華月を見つけ出すことは出来なかった。







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