「美裕!! お前ん所の男子どうにかしろ!!」
「は?」
「親衛隊だよ親衛隊!! 昨日華月がボコられた(?)」
むしろボコったのは華月であるが。
「知らないわよ。...大丈夫だった? 華月さん」
「いや、全然大丈夫」
かすり傷一つつけられていない。
「男子ってホントくだらない生き物よね。華月さんは例外だけど」
特別待遇。
「でもかっこいいな、親衛隊なんているんだもん!! 芸能人みたいだよね」
「「え...?」」
葉月と美裕は目を丸くした。
実際問題として、華月にも親衛隊くらいある。
華月を好き好む人は大抵控えめな人たちなので、全くその存在感がないのだが、かなりいる。
そしてその親衛隊のトップに君臨するのが祐李だったりする。
なんせ幼稚園時代からずっと華月華月華月華月唱えてきただけのことはある。
「(...分かってはいたけど、自覚全く無いんだ...)」
「(お前...)」
「どうしたの? 難しい顔して」
「華月ぃぃぃぃぃッ!!」
後方60mから廊下を激しく全力フルダッシュしてくる影があるかとおもえば、
祐李だった。
「襲われたんだって!?
大丈夫!? もう童貞じゃなくなっちゃった!?
まさか、フェ○チオさせられたとか!?
ぎゃー、マジぶっ殺す!!
ってかちょっと見たかった...。華月のレイ○されてるとこ...うはw」
「朝っぱらから盛るなこの、変態。廊下で騒ぐな」
「で、誰にヤられた?」
「いや、やられてないよ。むしろ殺った」
「ヤった?」
漢字変換が噛みあわない二人。
「華月って攻め!? 攻めだったの!?
あ、でも華月が攻めたいていうんだったら僕受けてもいいよ...ww」
「...は?」
「はーい、華月さんはコイツの話に耳を傾けてはいけませーん」
美裕が華月をガードする。
「あのさ、僕もともと童貞じゃないよ?」
廊下に衝撃が走った。
「...え?」
葉月も美裕も祐李も、それ以外の人たちも、静止。
というか生死を彷徨っている。
「童貞の意味、知ってる?」
「うん」
「童顔のことじゃないよ?」
「知ってるよ!!」
「相手は...お、とこ?」
まさか女ではあるまいと、きっと男にそそのかされたのだと踏む。
「は!? 男なわけないじゃん!! 女の人と」
コイツが、女と?
「ちょ...(華月が...女の乳揉んだのか!? ってかどっちが仕掛けたんだよ!!)」
「...(女に襲われたか? 華月さん)」
「(ゆ、ゆるせねええええええッ!! いつの間に!!)」
完全華月受け説。
「え? 何、僕問題発言した?」
「華月さん、そう、逆レ○プってやつね!!」
「はっ!? 違うよ、そんなんじゃ」
全く華月の話を聞かない。
「え、華月ヤったの!? やる〜。誰? 誰? ガッコの人?」
小田原登場。
「違う...、もういいでしょ!! 深入り厳禁!! 立ち入り禁止!!」
聞き耳を立てていた者たちを蹴散らし、
教室の自分の席に音を立てて座る。
「なんっ、なんだよ!! 僕がヤっちゃいけないのか!?」
じーっと集まる視線に華月が叫ぶ。
「いや、別にそれは個人の勝手だから全然いいんだけど...
この際単刀直入に聞くけど、誘ったのはどっち」
美裕に聞かれて応えないわけにはいかなくなった彼は、俯いて
「む、こうだけどっ..」
全員が安堵の表情を浮かべたので、華月は再度声を上げる。
「な、何で!? 何で安心するの!?」
「さて...授業の準備準備」
「わ、酷いっ、葉月無視!?」
「さぁて、次は選択だから...じゃあね〜華月さん」
「え、ちょ、待っ...美裕さん!!」
「華月。良かった。やっぱり華月は受けだ」
「は!?」
いつもどおりの教室に戻る。
華月は納得がいかなかったが、チャイムに丸め込まれ、全てが丸く収まってしまったのだった。
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